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できてしまった下肢静脈瘤、3種類の治療を徹底比較!

 2016/03/23 コラム 治療 病名
この記事は約 8 分で読めます。
下肢静脈瘤

命に別状がないと言われる下肢静脈瘤。放っておいても大丈夫という見解もある一方で、見た目にわかるように症状が進行していくのもこの病気の特徴です。いったい治療にはどんな選択肢があるのか。気になる費用、治療内容、手術時間まで、丁寧に解説します。

静脈瘤、3つの手術

下肢静脈瘤ができてしまった場合、血管外科を専門としない先生では、放っておいて大丈夫と言われる方が多いようです。極端な言い方をすれば、命に関わる病気ではないので、必ずしも手術を受ける必要はありません。

ただし、一度壊れた静脈は薬では治ることはなく、予防をしなければ少しずつ進行します。その結果、だるい・むくむ・つる・かゆいといった不快な症状が進行してきます。さらにひどくなると、湿疹や色素沈着(皮膚が黒ずんできます)、潰瘍形成(皮膚がじくじくしてきます)などの皮膚症状が出現します。

下肢静脈瘤の治療法は、来院された方々、ひとりひとりとのご相談になりますが、治療法のひとつに手術があります。手術には大きく3種類あります。

1つ目は、ストリッピング治療です。これは、この血管を取り除くことで流れをなくします。

2つ目は、レーザー治療です。血管の内側からレーザーで焼いて閉塞させることで流れをなくします。その結果、血液の逆流がなくなるためにボコボコが消え、だるい・むくむといった不快な症状が改善します。ただボコボコがひどい方の静脈瘤が100%なくなるという対応ができないために、次の方法もあります。それは3つ目の小切開静脈瘤切除です。約3mmの小さなキズから特殊な道具を用いて、直接、静脈瘤を取り除く方法です。

2011年4月にELVeSレーザーが保険適用となる以前、ストリッピング治療は、下肢静脈瘤の標準治療として行われてきました。現在でも、レーザー治療を行っていない施設ではストリッピング手術が標準治療です。どちらが良い治療かは一概には決められるものではなく、1人1人の患者さんに応じた治療が必要です。

動画で見るストリッピング手術の図説(48秒)※音はありません

取材協力:寺田病院下肢静脈瘤センターより

動画で見るレーザー手術の図説(23秒)※音はありません

取材協力:寺田病院下肢静脈瘤センターより

最新治療はレーザー治療1470mm

最新の手法はレーザー治療です。

現在、日本で健康保険適用となっているレーザー機器はELVeSレーザー(980nm, 1470nmの二種)のみです。2011年4月に国内で初めて980nm ELVeSレーザーが「下肢静脈瘤血管内治療レーザー」として医療機器承認を取得し、年々施行する施設が増えています。 そして、20145月に980nm ELVeSレーザーの後継最新機種として1470nm ELVeSレーザーが登場しました。

このレーザーを用いた場合には、どの病院でも手術料金は、片足につき健康保険3割負担の方で約4万3000円、1割負担の方で約1万4000円と決まっています(実際の治療費は、これに麻酔費用や検査費用などが加わります)。

これ以外のレーザーを用いている施設は、10万円や20万円(あるいはもっと高額)の自費診療を行っているようです。高額なレーザーでは治療後の痛みが少ないことがいわれていますが、治療効果に大きな差はないといわれています。日本全国で最も行われているレーザー治療はELVeSレーザーです。

下肢静脈瘤治療を専門としている施設では、1470nm ELVeSレーザーを取り入れられてきています。

手術料金はこれまでと同じで、手術時間は速くなり、手術後の痛みや内出血が格段に起こらなくなりました。

980nm ELVeSレーザーでは、手術後の合併症として、レーザー部の痛みと皮下出血(内出血)が多かれ少なかれ生じてしまいます。 痛みは痛み止めの服用でコントロール可能ですし、皮下出血(内出血)は約2-3週間で消失しますが、やはり患者さんにとっては不快な合併症で、これらが起こらないに越したことはありません。

1470nm ELVeSレーザーでは、このレーザーと新しいレーザーファイバー(ラディアル2リングファイバー)の組み合わせにより、980nmレーザーで起きる皮下出血や痛みがほとんど生じなくなりました。費用はもちろん980nmレーザーも1470nmレーザーも同じ料金です。現在のところ、日本で下肢静脈瘤レーザー治療を受けるなら、1470nm ELVeSレーザーが安価で痛みもなく最善の治療法であると思います。

ボコボコ血管をきれいにするには小切開静脈瘤切除法を組み合わせていく

実は、レーザー治療のみではふくらはぎのボコボコした血管はきれいにはなりません。

ふくらはぎのボコボコが軽い患者さんは、レーザー治療のみで治療可能(レーザー治療のみで目立たなくなる)ですが、ボコボコがかなり目立っていてきれいにしたい方は、レーザー治療と静脈瘤を直接切除する方法を組み合わせることが一般的です。レーザー治療は全く切らない治療方法ですが、太ももの壊れた静脈をレーザーで治療し、その後にふくらはぎのボコボコを直接取り除きます。

静脈瘤を直接切除するのは小切開静脈瘤切除法という方法で、約3mmの小さなキズから特殊な道具を用いて静脈瘤を取り除く方法です。少し前までは、静脈瘤を切除する方法は1cmのキズの大きさが必要でしたが、最近では3mmで切除することが可能になりました。

3mmのキズですので、キズを縫う必要はなく、手術後の消毒も必要ありません。手術翌日にテープを貼り、でシャワーを浴びるのもテープを貼ったままでOKです。1週間後にテープをはずして治療終了です。3mmのキズは数ヶ月たつとほとんど跡が残らず目立たなくなります。

レーザー治療とストリッピング治療の比較Q&A

では、レーザー手術とストリッピング手術の詳細について比較してみていきます。費用、値段、治療内容、手術時間など、知りたい実際を比較していきます。

【手術時間について】

レーザー治療、ストリッピング治療どちらも片足約30分、両足で約1時間程度です。

【手術のキズについて】

レーザー治療は膝の内側から針を刺して、レーザーファイバーを壊れた大伏在静脈内に挿入し、内側から焼灼する治療ですのでほとんどキズが残りません。 ストリッピング手術は、足の付け根(鼡径部)と膝の内側にそれぞれ1-1.5cmほどのキズをつけて、特殊な道具で壊れた大伏在静脈を抜き取る手術です。ですから、ストリッピング手術では足の付け根(ソケイ部)と膝の内側に最低二カ所のキズが残ります。

【麻酔方法について】

レーザー治療もストリッピング治療も局所麻酔で行うことが出来ます。ただし、手術中は静脈麻酔を用いて眠っている方が、手術中の記憶がなく、気づいたときには手術が終わっていますので、患者さんの評判は圧倒的に静脈麻酔を用いる方がよいです。静脈麻酔を用いた場合にも、手術後数時間で帰宅可能です。両足ストリッピングの患者さんには麻酔科専門医による全身麻酔をおすすめしています。

【費用はどちらが安い?】

ストリッピング手術料金は片足:3割負担の方で3万3000円、2割負担の方で2万2000円)です。

レーザー治療の手術料金は片足:3割負担の方で4万3000円、2割負担の方で2万8000円)です。

*実際の治療費用は、麻酔やお薬の費用、入院の方は入院費用などが加わります。

【どっちの治療があってるの?】

キズがつかないことや日帰り手術が可能なことから、レーザー治療がどんどん広まっていますが、患者さんによって、レーザー治療がふさわしい人、ストリッピング手術がふさわしい人がいます。

壊れた静脈が太すぎたり、皮膚の表面を走行している人や、曲がりくねっている人は、レーザー治療はふさわしくありません。

また、色が白い女性の方で表在静脈が皮膚の近くを走行している方は、レーザー治療後に色素沈着(しみ)が残ることがあり、ストリッピング手術の方がきれいになることもあります。1人1人の患者さんに応じて、ふさわしい治療を選ぶことが大切です。

【日帰り治療と入院治療はどちらがいいの?】

レーザー治療後は、手術後72時間以内に超音波検査でレーザー治療後の血管を検査する必要があるため、日帰り手術の場合は、通常翌日に再受診しなければなりません。治療を受ける施設とご自宅が近所の方、片足のみの治療の方は日帰り治療が可能です。両足同時治療の方やご自宅が遠方の方は、一泊二日(入院して手術し、翌日検査して退院)や、二泊三日の治療をお奨めいたします。

関連記事:手術するのか、しないのか。日帰り手術か、それとも短期入院がいいのか・・・費用、アフターケアなど徹底比較!

専門医に相談しよう

いかがでしたでしょうか。実際に手術をされた方々の声を聞いてみますと、「手術が思ったより簡単だった」「見た目もかなりきれいに治ったし、むくみなどがなくなった。我慢しないで早く手術を受ければよかった」という感想が多くみられます。

もし今悩んでいらっしゃる方がいらっしゃいましたら、まずは今かかっている先生に、上記の項目や気になる点、不安なところをしっかりと相談してみてください。どの手術が合うのか、予算や保険はどうなのか、これらは個人の方でまったく違ってきます。この記事がそういった確認の一助になれば幸いです。

医師に相談する方はこちらを参考にしてください。
 【日本全国】下肢静脈瘤専門医のいる病院

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ナオル

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こんにちは。日本を健康にすべく健康惑星からやってきたナオルです。

僕、こう見えて医者なんです。人間の体って面白い。特に、地球上生物の栄養摂取と排泄の仕組みは興味深い(僕たちは食べませんから)。そんなわけで、専門分野は消化器、肛門疾患です。今日も日本中から集めた論文や臨床に基づいた確かな情報をお届けします。

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