ピーナッツを食べると長生きできる?
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30年間かけて12万人を調査した健康調査
ではまず、どのような人たちを対象にこの調査・研究が行われたのかを見てみましょう。
【対象】
アメリカで看護師を対象とした大規模疫学研究である「看護師健康調査」(1980年~2010年)の女性76,464人のデータと、アメリカでの歯科医、薬剤師、獣医などの男性医療従事者を対象として行われている大規模前向きコホート研究である「Health Professionals Follow-Up Study」(1986年~2010年)の男性42,498人、計男女118,962人の30年間のデータ。
この研究の対象となったのは、アメリカで行われた信頼性のある2つの調査に参加している約12万人で、とても大規模な調査です。
観察期間も、約30年間という長い年月の調査でありデータとしてもとても信頼来出るものであると考えられますね。
ナッツを食べる頻度を徹底調査
【方法】
この人たちに、2年ごとに健康状態と生活状況のアンケートをとって調査した。
食事の内容・摂取量などは2~4年おきに食品別頻度アンケートにより調べられた。
その中で、ナッツ(28g)を食べる頻度を調べた。
(全く食べない人、1か月に1~3回の人、1週間に1回の人、1週間に2~4回の人、1週間に5~6回の人、1日1回の人、1日に2~3回の人、1日に4~5回の人、1日に6回以上の人)
ナッツの種類は、ピーナッツとその他のナッツに分けて検討した。
分析と結果は、「全く食べない人」、「1週間に1回未満の人」、「1週間に1回の人」、「1週間に2~4回の人」、「1週間に5~6回の人」、「1週間に7回またはそれ以上の人」に分けて検討した。
いくら「ナッツを食べたら良かった」と言う報告でも、一日に何キロも食べなければ効果がないとか、嗜好品のレベルを超えた量であると問題外ですよね。
この研究では「28gの量のナッツを1週間にどれくらいの頻度で食べたか」を見ています。
ナッツ28gとはどれ位の量なのでしょうか?イメージし易いように、チョコボールで考えてみましょう。皆さんよくご存じのお菓子、森永のチョコボールです。
チョコボールは、実際にはチョコレートなどを含んでいますが、1箱が28gです。あの箱の中のチョコボールがすべてピーナッツだと思い、その量で調べたのだと想像すると良いでしょう。これを毎日1箱食べるのは、可能ですし、現実味がありますね。
ナッツの消費量が増えるほど死亡率が低下した!
【結果】
経過中に27,429人(女性16,200人、男性11,229人)が死亡した。
その経過中の死亡率を、ナッツを全く食べない人を基準に検討した。すると女性と男性の両方の死亡率ともナッツの消費量が多くなると低下していた。具体的な数値は下記の通り。
全く食べない | 1週間に1回未満 | 1週間に1回 | 1週間に2~4回 | 1週間に5~6回 | 1週間に7回又はそれ以上 | |
女性 | 1.00 | 6%低下 | 12%低下 | 15%低下 | 12%低下 | 12%低下 21%低下 |
男性 | 1.00 | 9%低下 | 9%低下 | 11%低下 | 17%低下 | 20%低下 |
計 | 1.00 | 7%低下 | 11%低下 | 13%低下 | 15%低下 | 20%低下 |
ナッツを全く食べない人に比べて、1週間にナッツを食べる回数が、1回未満の人で7%低下、1回の人で11%低下、2~4回の人で13%低下、5~6回の人で15%低下、7回以上の人で20%も死亡率が低下していた。
ここに表記していませんが、論文を読むと、調査にあたっては、BMI、喫煙の有無、アルコールの飲酒量、糖尿病の既往、食塩の摂取量などの影響がないように調整されてから検討されています。これらの点からも、このデータをより信憑性のあるものにしています。
ナッツの種類、どれが最も有効?
ひと口にナッツと言っても、ピーナッツの他にも、アーモンドやカシューナッツ、ピスタチオ、くるみ、ココナッツなどいろいろあります。そこで、ピーナッツとそれ以外のナッツで検討してみたデータもあります。
それぞれ死亡を引き起こした病気の発生とナッツの頻度を調査したものです。
【結果】
死亡を引き起こした原因とピーナッツとそれ以外のナッツで、全く食べない人を基準に、1週間に2回またはそれ以上食べる人でどうなるのかを検討した。
ピーナツ | それ以外のナッツ | |
全ての死 | 12%低下 | 17%低下 |
癌による死 | 関連なし | 17%低下 |
心臓病による死 | 24%低下 | 24%低下 |
呼吸器疾患による死 | 26%低下 | 関連なし |
感染症による死 | 32%低下 | 関連なし |
腎臓病による死 | 48%低下 | 関連なし |
それぞれ、全く食べない人より、週に2回ほどでも食べている人の方が、低下していました。特に、ピーナッツの方がそれ以外のナッツよりより相関がありそうですね。つまり、ピーナッツを食べると長生きできる可能性がありそうということです。
糖尿病や心臓疾患にもナッツの有効性が・・・
この研究の他にも、ナッツを食べると2型糖尿病の発症リスクが低下するというものも2016年の「DIABETES & METABOLISM」に掲載されています(1)。
また、複数の研究により、ピーナッツを食べる頻度が高い人ほど、心臓疾患のリスクが低いことも示されています。
まとめ
それぞれ、とても興味深い調査結果ですね。
しかし今のところ、日本からのピーナッツと死亡率を調査した研究結果は報告されていません。
外国のデータがそのまま日本人である私たちに当てはまるかは、人種差などの検討はされていませんので何とも言えません。しかし、必ずピーナッツを食べると長生きするとは言い切れませんが、可能性はあるかもしれませんね。
では、また面白い論文があったら紹介します。
(1)「Nut consumption is associated with lower incidence of type 2 diabetes: The Tehran Lipid and Glucose Study.」
Asghari G, Ghorbani Z, Mirmiran P, Azizi F. Diabetes Metab. 2016 Nov 16. pii: S1262-3636(16)30508-0.