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【トマトの無限のチカラ・リコピン】ガンやアトピー、花粉症に続々報告が…

 2017/01/17 コラム 予防
この記事は約 9 分で読めます。

世界で最も作られている野菜・トマト

現在、トマトは全世界で約1億5000万トンも生産されていて、世界で最も生産量が多い野菜のひとつです。

日本の摂取量でみてもその量は多く、日本人は一人当たり年間に約9kgのトマトを摂取しています。ケチャップ、スパゲティナミートソース、ピザ。トマトを使った食品や食べ物はたくさんありますよね。トマトはもはや、日本人の食生活には欠かせない野菜といえます。

だからこそ手軽に食べられるともいえます。

全身に効く?!とどまるところを知らない「リコピン」のチカラ

「リコピン」とは、自然界に存在する色素(カロテノイド)のひとつなのですが、トマトが真っ赤な理由が、この「リコピン」がはいっているためなんです。

冒頭でもご紹介しましたが、このリコピンには、驚くべき力が、いくつもあることが分かっています。リコピンの凄さとは?そして、何に効果があったという報告が上がっているのか?

病名別に詳しくご紹介します。

「抗酸化作用」がある

リコピンの驚くべき力のひとつが、「抗酸化作用」です。

人間は、生きるために呼吸をしています。常に酸素を取り込んで二酸化炭素を吐き出しています。身体に取り込まれた酸素は、ほとんどがエネルギーになるのですが、あまった酸素は、酸化して身体に悪影響を及ぼし、生活習慣病や癌などを引き起こすことが分かっています。

この酸化作用を抑える働きが「リコピン」にはあると言われています。

β-カロテンやビタミンEにも抗酸化作用があるのですが、「リコピン」には、その何倍もの効果があると言われています。

がんのリスクを低下するかも?

「リコピン」が前立腺がんの発がんリスクを低下させたという報告や、「リコピン」を前立腺がんの患者さんに投与した介入研究で、患者さんの予後を改善させたとの報告もあります。-1.2.3

その他、文部科学省科学研究費による大規模コホート研究である「JACC研究における肺がんに関する成績」をレビューした結果では、「リコピン」が男性肺がんリスクと負の相関を示したことも分かりました。-4.

前立腺がん、肺がんの他のがんでも、「リコピン」が発がんリスクを低下させたとの報告もあります。「リコピン」が各種のがんのリスクを低下させる可能性が期待されます。

※ 文章末尾の数字に該当する論文は、最後にまとめて記載しています。

動脈硬化を防ぐ可能性が?

動脈硬化の発症や進行は、悪玉コレステロールであるLDLコレステロールの酸化から始まります。

「リコピン」と動脈硬化との関連する報告には、健常な大学生31名にトマトジュースを飲ませたところLDLの酸化防止の関連を認めたという報告があります。-5.
このことから「リコピン」が動脈硬化の予防に効果があるとも考えられています。

また、マウスを用いた実験では、「リコピン」に動脈硬化の要因である血管内皮細胞障害に関する保護作用がある可能性が示唆されています。-6.

骨が強くなるかも?

アメリカの女性を対象とした調査で骨粗しょう症を発症している女性では、血中の「リコピン」のレベルが低下していることが示されました。-7.

また、アメリカでの17年間の追跡調査で「リコペン」の摂取量が多いほど腰骨と非脊椎の骨折のリスクが低減したと報告もあります。-8. 注:リコピンはリコペン同様色素の一種です。

その他、細胞レベルでの研究では、「リコピン」が骨破壊を抑制することが分かっています。
骨は破骨細胞という細胞により壊されては、骨芽細胞という細胞により作られて、新しい丈夫な骨が常に維持されています。このバランスが壊れると骨粗しょう症のようなに、骨が弱くなってしまうことになります。

東京農業工業大学とカゴメ研究所の共同研究では、「リコピン」が破骨細胞を抑え、骨の破壊を抑制したことをマウスで証明しています。

アトピー性皮膚炎がよくなるかも?

広島大学医歯薬学総合研究科の秀教授らは、アトピー性皮膚炎モデルマウスを用いた試験で「リコピン」の摂取が角層水分量の低下抑制や、皮膚の炎症細胞の増加抑制作用を示すことを明らかにしています。

これらの結果から、「リコピン」を多く含むトマトの摂取がアトピー性皮膚炎の抑制につながることを期待されています。

メタボリックシンドロームを予防する可能性あり?

onaka-hari

欧米から、血中の「リコピン」濃度とメタボリックシンドロームとが関連したとの報告がいくつかあります。

それらの報告では、例えばオーストラリア人を対象にした血中「リコピン」を含むカロテノイドレベルとメタボリックシンドロームとの関係や、オランダ人を対象にカロテノイド摂取量との関係の報告がありします。-9.10.

これらの横断解析研究から、「リコペン」等のカロテノイドの血中濃度あるいは摂取量と、メタボリックシンドロームリスクとに有意な負の関連を認めていました。
「リコピン」の摂取でメタボリックシンドロームが予防できる可能性が期待されます。

男性不妊を改善する可能性も?

tomato

国際医療福祉大学病院リプロダクションセンター岩本医師らは、男性不妊患者44人にトマトジュースを1日1缶(190g)、3ヶ月間飲み続けた結果の精子運動率などを評価しています。

結果はトマトジュ―ズを飲むことで精子運動率の改善が認められ、精巣での炎症の度合いを示す指標である精液中白血球数の改善が認められました。

精巣で炎症が起こると精子の状態が悪化することが知られているので、トマトジュースを摂取することで精巣での炎症が抑制されることが確認されました。この結果に「リコピン」が関連している可能性があります。

「リコピン」で男性不妊を改善できるかも?

花粉症の症状を改善するかも?

花粉症

花粉症の自覚症状がある患者さんに「リコピン」をカプセルにしたものを毎日1粒、12週間摂った結果、くしゃみ、目鼻のかゆみなどの花粉症自覚症状のアンケート結果が改善されたとの報告があります。
「リコピン」が花粉症の症状を改善させる可能性があります。-11.

リコピンが最も摂取できるメニューと食べる時間とは?

カゴメ株式会社のラットを使った実験では、朝、昼、夜にラットにトマトを食べさせてみると、朝に食べさせたラットで一番、「リコピン」の吸収量が多いことがわかりました。

どうやらトマトは朝に食べたほうが効果的のようです。朝、サラダとしてトマトを食べたり、トマトジュースを飲む習慣を持つなどもいいかも知れません。

さらに、加熱するとリコピンがより吸収することもわかっています。

少し早起きして、朝からトマトスープを取ったら、完璧ですね!

まとめと次回予告

いかがでしたでしょうか?トマトに含まれる「リコピン」の無限の力。

発がんのリスク、動脈硬化の予防、骨の強化、アトピー性皮膚炎を抑える、メタボリックシンドローム予防、男性不妊症の改善、花粉症の改善にまで及ぶパワー、わかっていただけたでしょうか?朝のトマトスープ、試してみてくださいね。

トマトの持つ力は、リコピンにとどまりません。次回は、「アミノ酸(グルタミン酸など)」について詳しく見ていきたいと思います。

文中に上げた論文一覧

  1. Giovannucci E: Tomatoes, tomato-based products, lycopene, and prostate cancer: Review of the epidemiological literature. J Natl Cancer Inst 1999; 91: 317―331.
  2. Chen J et al. Lycopene/tomato consumption and the risk of prostate cancer: a systematic review and meta-analysis of prospective studies. J Nutr Sci Vitaminol (Tokyo). 2013;59(3):213-23.
  3. 【生活習慣からみたがん発生・予防】 前立腺がんの予防 宮永 直人(水戸済生会総合病院 泌尿器科), 癌と化学療法 (0385-0684)42巻5号 Page538-543(2015.05)
  4. Ito Y. et al. Lung cancer mortality and serum levels of carotenoids, retinol, tocopherols, and folic acid in men and women: a case-control study nested in the JACC Study.J.Epidemiol.2005,15:
    S140-149.
  5. Maruyama C et al. Effects of tomato juice consumption on plasma and lipoprotein carotenoid concentrations and the susceptibility of low density lipoprotein to oxidative modification. J Nutr Sci Vitaminol (Tokyo). 2001 Jun;47(3):213-21.
  6. 動脈硬化症の要因である血管内皮細胞の機能障害に対するトマトの保護作用
    菅沼 大行(カゴメ総合研究所)日本農芸化学会誌 (0002-1407)72巻臨増 Page296(1998.03)
  7. Yang Z. et al. Serum carotenoid concentrations in postmenopausal women from the United States with and without osteoporosis. Int. J. Vitam. Nutr. Res. 2008,78(3):105-111.
  8. Sahni S. et al. Protective effect of total carotenoid and lycopene intake on the risk of hip fracture: a 17-year follow-up from the Framingham Osteoporosis Study. J. Bone Miner. Res. 2009,24(6):1086-1094
  9. Coyne T. Et al. Metabolic syndrome and serum carotenoids: findings of a cross-sectional study in Queensland, Australia. Br. J. Nutr. 2009, 102(11):1668-1677.
  10. Sluijs I. et al. Dietary carotenoid intake is associated with lower prevalence of metabolic syndrome in middle-aged and elderly men. J. Nutr. 2009, 139(5):987-992.
  11. リコピンに富むトマト加工品の摂取が花粉症に及ぼす影響

石川 信吾(カゴメ総合研究所 バイオジェニックス研究部)ら アレルギー 56巻8-9号 Page1126(2007.09)

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