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潰瘍性大腸炎

 2016/06/16 内視鏡検査 治療 病名 症状
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潰瘍性大腸炎

◆潰瘍性大腸炎 

【どんな病気?】

潰瘍性大腸炎は、大腸及び小腸の粘膜に慢性炎症・潰瘍を引き起こす、原因不明の腸の炎症「炎症性腸疾患」のひとつです。

原因には諸説あります。腸内に棲む細菌のバランスが崩れたことが、大腸炎の発症や症状の進行に関わっているのではないかという細菌説。人間の免疫機構(体を外敵から守ろうとする体内の防衛システム)が、体の一部であるはずの大腸の粘膜を敵として認識して攻撃し破壊しているという自己免疫異常説。食生活やストレスが大きく関与している説などさまざまですが、結局はっきりした原因はわかっていません。患者さんの数は年々増加しており、現在約16万人が潰瘍性大腸炎として特定疾患医療費助成対象(下記の治療・処置を参照)として登録されています。 発症年齢は男性で2024歳、女性で2529歳をピークとします。

【体の症状は?】

初期の症状は腹痛とともにゼリー状の粘液が排便時に多くなり下痢の傾向になります。放置しておくと粘液の量が増えるとともに血液が混じるようになったり(粘血便)、血便が出るようになります。さらにひどくなると一日に何十回も粘血便が起こり、体重減少、まれに便秘も認められます。一般に経過は緩やかで悪くなるとき(再燃)と、良くなるとき(緩解)を繰り返しますが、電撃的に急激な発熱と粘血便で発症することもあります。

【検査】

血液検査における炎症反応、大腸内視鏡検査による腸内の観察が必要です。病変は直腸から連続的に口側に広がり、腸管の内面(粘膜)は「びまん性(症状ははっきりしないが全身に広がること)」に侵されます。毛細血管は見えなくなり、易出血性で「びらん」や「潰瘍」を認めます。病変の部位から生検(粘膜の微小片を採取し顕微鏡で観察)して確定診断をします。

潰瘍性大腸炎 内視鏡

さらに詳しく→内視鏡検査って何をするの?

【治療・処置】

潰瘍性大腸炎と診断されたら、国や自治体から特定疾患医療給付制度があり、医療費補助が受けられます。手続きは下記の通りです。

1.住民票登録している区域の保健所で特定疾患専用の診断書と申請書をもらう。
2.診断した担当医師による診断書の記入
3.本人または保護者による申請書の記入
4.受給者証の交付(書類審査が終了から約1から2ヶ月)

1:医療費補助の開始日は各都道府県で異なりますので確認が必要です。(申請書受理日、受理月の月初など)
2:受給者証の有効期限は1年間です。更新は満了2ヶ月前までに手続きが必要です。

潰瘍性大腸炎の多くの場合、薬物療法や食事療法にて一時的もしくは永続的に症状は緩解します。ですが症状が改善されても医師の指示があるまでは通院する必要があります。特に慢性持続型、発症から10年以上経過している例や、全結腸型の例では定期的検査が必要です。

軽症の患者さんには5ASA製剤の飲み薬による治療が基本的なものになります。重症の患者さんや全身症状を伴う中等症例ではステロイドの大量療法や免疫抑制剤を使用し入院による全身管理が必要です。多くの患者さんは薬物療法により緩解が得られますが、ステロイドは臨床症状や炎症反応等の様子を見ながら徐々に減量していきます。

<薬物療法の詳細>

5-ASA製剤:腸管の中で局所的に働き、炎症を抑えます。従来から使用されてきた薬剤にサラゾスルファピリジン(略号:SASP 商品名:サラゾピリン)とメサラジン(商品名:ペンタサ)があります。SASPは腸内に到達する前に大半が吸収されてしまいましたが、ペンタサは腸で徐々に有効成分を出すように製剤設計されています。

【副作用】 アレルギー症状、発疹、消化器症状、頭痛などがあります。このほか肝障害や溶血性貧血、白血球減少があります。男性の場合は精子の減少や運動能の低下から男性不妊の原因となることもあります。妊娠に対する投与については通常の投与量では催奇形性は無いとされていますが、薬が母乳から移行することから出産後は十分に専門医に相談することが必要です。

副腎皮質ステロイド: 強力な炎症抑制作用を有します。内服薬のほかに坐薬、注腸(肛門から注入する薬)、静脈内注射を程度に応じて使います。

【副作用】 体重の増加、顔の浮腫み、にきび、不眠、糖尿病の悪化、骨がもろくなる、感染症にかかり易くなるなどがあります。

免疫調節剤: 免疫の異常な働きを抑えます。ステロイドで改善がみられない患者さんや副作用が強い患者さんに免疫抑制剤の少量投与を行なうことでステロイドの減量や中止ができるようになりました。

抗TNF-α抗体:炎症を起こす様々なタンパク質のひとつ「TNF-α」を阻害する薬は、寛解(かんかい:症状が治ること)導入や寛解維持効果がともに非常に優れているため、潰瘍性大腸炎で使用されます。いくつかの種類と使用方法があり、症状の重症度などに応じて、それぞれの病院の経験や実情で使い分けされています。現在、抗TNFα抗体製剤に続く分子標的治療薬が次々開発されています。

<食事療法の詳細>

一般的に症状が活動期の場合、腸管からの栄養の摂取が妨げられ体力の消耗を起こすことがあります。高エネルギー食、良質のタンパク質、消化の良い食品を補給することが基本です。大腸を刺激する食物繊維や下痢になりやすい脂肪の多いものはとらないようにします。

緩解期にはそれほど神経質になることは必要ありませんが、当然暴飲暴食や、過度のアルコール、コーヒーや香辛料、炭酸飲料の摂取は避けるようにします。

<血球成分吸着・除去療法>

潰瘍性大腸炎は、大腸粘膜のびまん性の炎症を来たす疾患ですが、炎症をひき起こしている白血球は全身を循環している末梢血から補充されます。この白血球そのものを除去すれば大腸の炎症も治まる仮定から試みられるようになった方法です。治療は週1回からはじめ、改善が認められると月1回の施行になります。薬剤療法で改善しない場合や、すぐに再発してしまう場合などの難治性の患者さんに使用されます。
従来の治療法と大きく違う点は、薬剤を使用するわけではないために、副作用が出にくいということです。ただし治療効果には非常に大きな個人差があるようです。

<手術療法>

手術療法は、全結腸切除が定型的です。様々な術式の中で、患者さんの状態、肛門機能、年齢などを考慮し、術後の排便機能などの観点から、なるべく肛門機能を温存する術式が選ばれます。手術療法の絶対的な適応としては、大量出血の場合、中毒性巨大結腸症(大腸が腫れあがり、毒素が全身に回ってしまったもの)、穿孔(大腸が炎症部より穴が開いてしまった状態)、癌化またはその疑いです。薬物療法などの内科的治療に反応しない重症の場合、副作用のためにステロイドなどの薬剤が使用できない場合も、相対的な手術療法の適応となります。

中毒性巨大結腸症

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