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クローン病 

 2016/06/17 内視鏡検査 治療 病名 症状 肛門病
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クローン病 メサラジン

◆クローン病 

【どんな病気?】

クローン病は、口腔から肛門に至る消化管のすべての部位に潰瘍ができ、それに伴い腹痛や下痢、血便が生じる病気です。大腸と小腸の粘膜に慢性の炎症または潰瘍を引き起こす原因不明の腸の炎症は「炎症性腸疾患」と呼ばれクローン病はそのひとつです。

先進国に多く、環境因子、食生活が大きく影響し、動物性タンパク質や脂肪を多く摂取し生活水準が高いほどかかりやすいといわれています。1932年にニューヨークの内科医師クローン先生らによって限局性回腸炎として報告されたのがクローン病の最初です。

遺伝的な要因が関与するという説、結核菌類似の細菌や麻疹ウィルスによる感染で発症するという説、食事の中の成分が腸管粘膜に異常な反応をひきおこしているという説、腸管の微小な血管の血流障害による説があげられていますが、いずれもはっきりとした証明はありません。

発症年齢は主として若い成人にみられます。男性で2024歳、女性で1519歳をピークとし、男女比は約2:1で男性に多いようです。欧米に比べその発症率は低いですが、平成26年度には、クローン病の特定疾患医療受給者証所持者数が40000人を超えました。(平成27年度衛生行政報告例より)

【体の症状は?】

クローン病の臨床症状は非常に多彩で、個人によっても侵された病変部位(小腸型、大腸型、小腸大腸型)によっても異なります。なかでも特徴的な症状は腹痛と下痢で、患者の約半数以上で見られます。さらに発熱、下血、腹部腫瘤、吸収障害に伴う体重減少、全身倦怠感、貧血などの症状も現れます。

瘻孔(ろうこう)、狭窄(きょうさ)、膿瘍(のうよう)などの腸管合併症や関節炎、虹彩炎、結節性紅班、肛門病変などの腸管外の合併症も多く、これらの有無により多彩な症状が出ます。

【検査】

血液検査における炎症反応と、大腸内視鏡検査による盲腸までの観察と、病変の多い終末回腸(小腸の終わりの部分)を観察することが重要です。クローン病の場合、縦にはしる潰瘍(縦走潰瘍)、敷石状の粘膜(敷石像)という特徴的な状態を認めます。病変部分から生検(粘膜の微小片を採取し顕微鏡で観察)して確定診断をします。

生検についてさらに詳しく→内視鏡検査って何をするの?

小腸造影検査:大腸内視鏡で異常を指摘できないもののクローン病が否定できない場合は小腸造影検査を行います。クローン病の場合、小腸の潰瘍、狭窄(腸閉塞)、穿孔(膿瘍)を認めることがあります。

クローン病

【治療・処置】

クローン病では腸管の安静に加えて、腸管腔からの抗原を取り除くことが治療のカギとなり、これを目的とした栄養療法には、経腸栄養法完全中心静脈栄養とに大別されます。

症状の進行したクローン病患者には経腸成分栄養療法を行ないます。高度な狭窄がある、広範囲な小腸病変が存在する、また成分栄養法を行なえない患者さんは完全中心静脈栄養が行なわれます。

経腸成分栄養療法に使われる栄養剤としてはたんぱく質と脂肪をほとんど含まない成分栄養剤、少量のたんぱく質と脂肪含量がやや多い消化態栄養剤、カゼイン、大豆タンパクなどを含む半消化態栄養剤があります。特に成分栄養剤は抗原性を持たないアミノ酸をたんぱく源とするため、消化をほとんど必要とせず、また脂肪分をほとんど含んでいないため、腸管の安静を保ちながら十分な高エネルギー、高たんぱく源の栄養補給を可能としています。さらに腸管内細菌叢を是正することも治療効果の一つと考えられています。

またこれらの療法では栄養状態の改善のみならず、腹痛や下痢などのクローン病の症状の改善も得られることが判っています。

【薬物療法の詳細】

5-ASA製剤:腸管の中で局所的に働き、炎症を抑えます。従来から使用されてきた薬剤にサラゾスルファピリジン(略号:SASP 商品名:サラゾピリン)とメサラジン(商品名:ペンタサ)があります。SASPは腸内に到達する前に大半が吸収されてしまいましたが、ペンタサは腸で徐々に有効成分を出すように製剤設計されています。
多くの医師の間で使用されていますが、従来の試験研究の見直しから検討すると5-ASA製剤の使用で予後の改善はないと考えられています。

【副作用】 アレルギー症状、発疹、消化器症状、頭痛などがあります。このほか肝障害や溶血性貧血、白血球減少があります。男性の場合は精子の減少や運動能の低下から男性不妊の原因となることもあります。妊娠に対する投与については通常の投与量では催奇形性は無いとされていますが、薬が母乳から移行することから出産後は十分に専門医に相談することが必要です。

副腎皮質ステロイド:強力な炎症抑制作用を有します。内服薬のほかに、静脈内注射を程度に応じて使います。

【副作用】 体重の増加、顔の浮腫み、にきび、不眠、糖尿病の悪化、骨がもろくなる、感染症にかかり易くなるなどがあります。

免疫調節剤: 免疫の異常な働きを抑えます。ステロイドで改善がみられない患者さんや副作用が強い患者さんに免疫抑制剤の少量投与を行なうことでステロイドの減量や中止ができるようになりました。

【副作用】貧血。感染症。肝機能障害、膵炎、嘔吐、食欲不振、口内炎などがあります。

抗TNF-α抗体:炎症を起こす様々なタンパク質のひとつ「TNF-α」を阻害する薬は、ステロイドなどの薬剤、栄養療法を使用しても効果がなかった病変、痔ろうの患者さんに効果があると考えられています。その治療効果がきわめて高く、また即効性がある治療法の1つです。

【食事療法】

クローン病の食事療法の原則は低脂肪・低残渣食・十分なカロリーです。

【手術療法】

難治性の狭窄(きょうさく)による腸閉塞、膿瘍(のうよう)、外瘻(がいろう)、内瘻(ないろう)ができている場合には外科的手術の適応になります。痔ろうなどの肛門部周囲病変に対しても外科的手術が必要になります。

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