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日本人3人に1人は該当してると言われる、痔を引き起こす6大要因はこれ!

 2016/01/19 コラム 病名 肛門病
この記事は約 8 分で読めます。

痔の原因って、いったい何なんだろう・・・

なってしまってから後悔するのが病気というものですが、トイレで痔のいたーい思いをするたびに、個室の中で「いったい何が原因なんだろう・・・」と振り返りの反省をしてしまったことはないでしょうか?

「この痛み、なくなるものなら、なくしてしまいたい・・・」原因を取り去ろうという意識が芽生えるのは人としてサガと言えましょう。体に病気が表出する時、要因は1つ、とは限りません。複数の事柄が重なっている場合も多くみられます。

肛門に炎症を起こす6大要因

日常生活で、肛門に炎症を起こす6大要因とは、「便秘・下痢」「肉体疲労」「ストレス」「冷え」「飲酒」「女性の生理」の6つです。

これらの炎症の原因を、攻撃因子の増大(炎症を起こす外的要因)と、防御因子の低下(からだを守る力の低下)と考えると、わかりやすくなると思います。

肛門を通過する便はきたない老廃物でアルカリ性であり細菌などもいるので、もともと肛門の皮膚粘膜にとって炎症を起こす攻撃因子であるといえます。便秘・下痢の排便の異常は、攻撃因子の増大です。アルコールも炎症を起こす物質なので、飲酒をすると攻撃因子を増大させることになります。

また、肉体の疲れやストレスは、肛門の局所免疫力を弱めるので、防御因子の低下を引き起こします。

これらを整理すると、攻撃因子が増大して痔になるケースが「便秘・下痢(排便の異常)」「飲酒」「女性の生理」の3つで、防御因子が低下して痔となるケースが「肉体疲労」「ストレス」「体の冷え」の3つになります。

では、ひとつずつ痔と関連させて解説していきます。

1便秘・下痢

便秘のときに、かたい便をいきんで排便すると、肛門の粘膜に傷がつくので、そこから便の中の細菌に感染して炎症を起こし、裂肛や内痔核になりやすくなります。また汚い便を何日もとどめておくことになるので炎症の原因にもなります。便秘のときにいきむと、肛門のクッション部に大きな腹圧がかかり動静脈叢が拡張するため、痔核になります。

慢性の下痢も便が勢いよく肛門を通過するときに、肛門の粘膜を傷つけて裂肛になったり、肛門腺窩に入って「細菌感染痔ろう」の原因になることがあります。

下痢のなかで一番多いのは、食べすぎや寝冷えで起こる一過性のもので、これは、ほうっておいても治ることが多いので心配はいりません。痔の原因となるのは、慢性の下痢症です。

とくにやっかいなのは、便秘と下痢が交互にあらわれる過敏性腸症候群です。

これは、ストレスなど心身の疲労によって腸の活動をコントロールする自律神経の働きが乱れ、腸の蠕動運動が活発になって起こるものです。ですから、過敏性腸症候群の治療は、ストレスの原因をつきとめ、それを排除するようにします。下痢を防ぐには、まず水分を控えめにすることです。

水やビールなどを飲みすぎると、大腸で水分を吸収しきれず、やわらかい便がさらにやわらかくなって下痢を起こします。よく、牛乳を飲むと下痢をするという人がいますが、これは牛乳に含まれている乳糖が腸で分解されないために起こるものです。その点、ヨーグルトは、すでに大半の乳糖が分解されているため下痢の心配はありません。また、タバコは下痢を悪化させます。

便秘

2肉体疲労

肉体疲労が痔につながるの?と思う方もいらっしゃるかもしれません。適度な運動は痔や便秘の解消につながるのですが、疲労が伴うまでの運動や肉体労働による肉体疲労は、筋肉に疲労物質をため、痔を誘発します。また、局所免疫力も低下するので、肛門内部に炎症が起こりやすくなって痔を招きます。

3ストレス

ご存じのとおり、人間のからだの免疫力は、心の状態によって高まったり、低下したりすることがわかっています。たとえば、ストレスや悲しいことがあると、免疫力は低下し、よく笑って楽しくすごすと免疫力は高まります。

ストレスは、免疫力を低下させるので、細菌に対する抵抗力がなくなって肛門が炎症を起こしやすくなります。もともと肛門はきたない便が通過するところなので、おびただしい細菌と接触しています。ストレスによって肛門の防御因子である局所免疫力が低下すると、攻撃因子が勝ってしまい肛門に炎症が起こり、痔の症状があらわれます。

4体の冷え

体が冷えると、肛門周囲の血管が収縮するので血液の循環が悪くなり、うっ血するので炎症が起こりやすくなります。

実は、エアコンの普及によって、夏なのにお尻を冷やして痔になる人が増えてきています。痔は夏の病気といわれるようになってきました。エアコンなしで夏が越えられないほど日本の夏は暑くなってきましたので、読んで初めて思い当たる方、いらっしゃると思います。エアコンの冷やしすぎには、十分に注意してください。

冷えの改善方法として、「座浴」という方法があります。お尻だけをお湯につける座浴をすると、血行がよくなって痔の原因の1つであるうっ血がとり除かれ、症状が改善されます。お尻を清潔に保つためにも、排便のあとすぐに入浴するなど試してみてはいかがでしょうか。

ただし、痔ろうの場合は、細菌感染による化膿が原因なので、温めると化膿がひどくなって痛みが増すので、温めてはいけません。

5飲酒

お酒の飲み過ぎは痔を誘発します。

お酒の主成分であるアルコールが、血管を拡張して炎症を引き起こす物質だからです。

アルコールは、肛門に炎症を起こす攻撃因子です。攻撃因子の増大を防ぐためには、飲酒の量は、心身の緊張をほぐす程度にしてください。あくまでも自分の体調に応じてですが、1日に、ビールなら中ビン1本、日本酒なら1合、ワインならグラス2杯くらいが目安です。

6女性の生理

これは女性だけの要因となりますが、月経の前や月経中に、便秘になったり、逆に下痢になったりして、排便の異常を訴える女性は意外に多いのです。月経中の肛門粘膜を観察すると、炎症を起こしているケースがほとんどです。原因は排便の異常だけではなく、月経そのものによって炎症を起こしている可能性があります。

詳しい仕組みは、まだわかっていませんが、黄体ホルモン(プロゲステロン)と卵胞ホルモン(エストロゲン)が月経前から月経中にかけて急激に低下することが原因ではないかといわれています。

月経は病気ではありませんし、たいていは周期的にくるので予測は簡単です。対処法としては、自分が月経前や月経中に便秘になりやすいのであれば、月経の数日前から、豆や海藻などの食物繊維の多い食品やヨーグルトを積極的にとって便をやわらかくする工夫をしておくとよいです。

また、月経中は肛門に炎症を起こしやすいので、睡眠時間を1時間長くしたり、仕事量を10%減らしたりするなど、肛門にストレスがかからなく生活をする努力が必要です。

これらの痔をまねく攻撃因子を排除するには、食物繊維をたっぷりとって便秘を防ぎつつ、休養や睡眠を十分にとって拾うやストレスを解消し、免疫力を回復させることが大切です。

痔を治して健康を取り戻すには?

6つの要因がわかったところで、では痔を治して健康をとり戻すためには、どうすればよいのでしょうか。トイレの個室での反省にこたえるべく、健やかさを取り戻すステップとして以下3ステップにまとめました。

1)病気になった原因を探す

上記に上げた、常習性の便秘、過労、ストレス、毎日の過度の飲酒などはすぐにわかる要因ですが、原因がすぐに見つからない場合もありますよね。そんな時は病院での検査も活用できます。

2)健康な状態に戻すために、見つかった原因を除去

できれば、原因が小さいうちに発見して、こまめに除去していくことがベストです。早期発見、早期治療というやつです。何より患者さんへの負担が減ります。

3)治る力=自然治癒力を最大限に高める

病気になって薬をもらったり、手術を受けて病気が治ると、薬や医師が病気を治した、と思う人が多いと思いますが、それは間違いです。病気を治す主役は、その人がもつ自然治癒力です。医師が行うさまざまな治療法は、そのお手伝いをしているにすぎません。人それぞれに適した、そして病状に応じた治療法は異なることから、その人にもっとも適した治療法をアドバイスすることが医師の仕事です。

つまり、その人の自然治癒力を最大限に引き出すために、医師は投薬をしたり、手術をしたり、食事療法や運動療法、心理学的カウンセリング、鍼灸、ヒーリング療法など、あらゆる治療法を検討し実行する、ということです。

まとめ

いかがでしたでしょうか。思い当たる節はありましたでしょうか。当たり前ですが、生活という原因と体という結果は密接につながっています。上記にもありますが、生理中の女性だけでなく、疲れて抵抗力が落ちたら睡眠時間を増やしたり、仕事量を少しだけ減らしてみたり、体に優しいものを食べたり、などご自身のからだと相談しながら、体に優しく抵抗力を戻してあげてくださいね。

また繰り返す痔、長く市販薬を使う状態の場合は一度病院での診察をおすすめします。

確かに恥ずかしさのある場所なので来院には勇気がいるかもしれませんが、市販薬は意外にも強い効果を瞬時に出すために強く作られているものもあり、使うことで逆に副作用が出る場合もあります。処方された薬は体に合ったものですし適切です。痔以外の他の病気が見つかることも多いです。ご自身の体のために病院をうまく活用してください。

 

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ナオル

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こんにちは。日本を健康にすべく健康惑星からやってきたナオルです。

僕、こう見えて医者なんです。人間の体って面白い。特に、地球上生物の栄養摂取と排泄の仕組みは興味深い(僕たちは食べませんから)。そんなわけで、専門分野は消化器、肛門疾患です。今日も日本中から集めた論文や臨床に基づいた確かな情報をお届けします。

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