いぼ痔(内痔核)、内外痔核、かんとん痔核、脱肛

どんな病気?
いぼ痔(内痔核)とは、肛門の奥の直腸との境に生じた静脈のかたまりをいいます。
肛門の奥の直腸との境(歯状線)の内側にできる内痔核と、肛門の外側にできる外痔核があります。内痔核に肛門周囲の静脈のかたまりが加わったものを内外痔核と呼びます。
脱出した痔核が肛門括約筋により締められて腫脹し、血栓(けっせん:血まめのこと)を生じたり一部壊死(えし:腐ること)したりして全く元に戻らなくなってしまったため激しい痛みに襲われる状態をかんとん痔核と呼びます。
また内痔核の付け根の粘膜が緩んでたるんでくると、肛門の外に飛び出してきます。これを脱肛といいます。
いぼ痔は、人間が二足歩行で歩いているために発症します。4つ足歩行の動物には、いぼ痔はできないとされています。動物は排便行為が必要なため、当然、便の出口である肛門があるのですが、その位置が心臓より下にあるのは人間だけなのです。そのため血流は重力の関係で肛門にうっ血しやすく『痔』となります。
体の症状は?
内痔核は、りきみや便秘によりうっ血し、膨らみがみられます。出血しやすくなる場合もあります。この位置は基本的に痛みの神経がないところなので痛みは伴いません。
内外痔核は、肛門粘膜は痛みの神経が敏感なため、痛みを伴います。かんとん痔核は激しい痛みを伴います。
内痔核はその症状の程度により4段階に分けられます。
Ⅰ度
出血が主な症状でいぼ痔の肛門外への脱出はない。内痔核が腫れており便がこすれて出血します。この段階では患者さんは出血に対する不安から医療機関を訪れます。そこで肛門の診察ではじめて内痔核の存在を知ることになります。
Ⅱ度
排便時にいぼ痔が肛門外に脱出するのを自覚するものの自然にいぼ痔が肛門内に戻る。内痔核の土台の粘膜がたるむことにより便に押し出されて脱出するようになるがまだ自然に戻る力がある。この段階では患者さんは排便時に脱出する内痔核の存在に気づいています。わずらわしさを感じたり残便感や出血に対する不安から医療機関を訪れます。
Ⅲ度
排便時に脱出したいぼ痔を指で押し戻すようになる。内痔核の土台の粘膜がたるんでしまっている為便に押し出されて脱出した痔核が自然には元に戻らなくなる。この段階では患者さんは排便時に脱出する内痔核に対しかなりわずらわしさを感じてきますので、どうにか治せないものかと悩むようになってきたり、残便感や出血に対する不安から医療機関を訪れます。
Ⅳ度
排便に関係なくいぼ痔が脱出してきてしまう。内痔核の土台の粘膜が緩みきってしまっているため排便に関係なく痔核が肛門外に脱出する。この段階では患者さんは脱出する内痔核に対し軟膏や姑息的な手術などを経験しており、すでに手術を覚悟されて医療機関を訪れる方が多い。
検査
多くの方は、病院での受診を決意されるまで、羞恥心や恐怖心から、症状があっても家庭医学書で自己判断して様子をみたり、市販薬を使用し治療しているケースが少なくありません。肛門疾患の診断で適切な問診が得られれば、ほぼ診断が可能となる疾患も少なくありません。
肛門の疾患は、肛門の専門治療を行なう専門医による検査と診断が必要です。受診科名に「肛門外科」等、「肛門」の名称が入った病院が専門病院です。
多くの肛門の専門医は大腸に関しても長けており大腸の検査も施行します。そのため肛門だけでなく、大腸も含めた下部消化管の診察がある場合があります。肛門出血、下腹部痛、便秘などの症状から痔と思って来院した結果、実は大腸がんだったケースは少なくありません。
<問診後に行われる診察の例>
直腸/肛門指診
肛門から指を挿入し届く範囲での直腸と肛門の中を触って診察します。最も基本的な診察法で、肛門の疾患で来院されたすべての患者が対象になります。
肛門鏡
肛門に筒型もしくは二枚貝のような道具を挿入し肛門内を直接見て診察します。多くの肛門専門施設ではデジタル(電子)肛門鏡を設備しており、患者様自身その映像をみることができ、施行しながら詳しい説明を受けられます。鮮明な画質で自分自身の目で見ることができ医師の病気の説明により一層の理解が可能です。
大腸内視鏡
肛門から出血した場合はすべての患者様が肛門からの出血とは限りません。40代以上の場合は大腸がんや大腸ポリープの可能性を除外する必要があり、若年者は潰瘍性大腸炎などの慢性的な腸炎が疑われる場合検査が必要です。
治療・処置
うっ血は軟膏により炎症を抑えると軽快しますが、粘膜のたるみは薬では改善しないため脱肛がある場合には手術による治療が必要となります。(入院5日~14日)手術には対処的手術と完治のための根本的な手術があります。体質的に『痔になりやすい人』と『痔になりにくい人』がいます。痔になりやすい人は、対処的手術の場合、繰り返して発症します。完全に治すには痔の切除が必要です。
かんとん痔核の治療は、できれば腫れが引くまで軟膏を塗り痛み止めを服用し脱肛してくる部分がなるべく小さくなってから切除するのが最善の方法です。それは痔核周囲の、本来正常な粘膜も腫れあがっているため、ほぼ全周性に腫れあがった部分をすべて切除した場合、傷が治った後に肛門狭窄などの障害を残す恐れが強いためです。
Ⅰ度の治療
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便通の改善
軟膏(座薬)により痔核の浮腫みを抑える 出血に関しては注射硬化療法が効果的 |
Ⅱ度の治療 | 便通の改善
軟膏(座薬)により痔核の浮腫みを抑える 脱出が軽度であれば、ALTA療法(ジオン注)、ゴム輪結紮術が有効 |
Ⅲ度の治療 | 便通の改善
ALTA療法(ジオン注)による治療 過去に治療歴があり改善されていない場合や経過が長い例は痔核根本手術、PPHの適応 ただし身体状況が悪い場合に出血に対しては注射硬化療法 脱出に対してはゴム輪結紮術を選択する場合がある |
Ⅳ度の治療 | 便通の改善
外痔核が大きくないものはPPHの適応もあり 過去に治療歴があり改善されていない場合や経過が長い例は痔核根本手術の適応 ただし身体状況が悪い場合に出血に対しては注射硬化療法 脱出に対してはゴム輪結紮術を選択する場合がある |
<問診後に行われる診察の例>
直腸/肛門指診
肛門から指を挿入し届く範囲での直腸と肛門の中を触って診察します。最も基本的な診察法で、肛門の疾患で来院されたすべての患者が対象になります。
肛門鏡
肛門に筒型もしくは二枚貝のような道具を挿入し肛門内を直接見て診察します。多くの肛門専門施設ではデジタル(電子)肛門鏡を設備しており、患者様自身その映像をみることができ、施行しながら詳しい説明を受けられます。鮮明な画質で自分自身の目で見ることができ医師の病気の説明により一層の理解が可能です。
大腸内視鏡
肛門から出血した場合はすべての患者様が肛門からの出血とは限りません。40代以上の場合は大腸がんや大腸ポリープの可能性を除外する必要があり、若年者は潰瘍性大腸炎などの慢性的な腸炎が疑われる場合検査が必要です。