がん告知の時に知っておきたい、わかりにくい病院用語。解説します

がん告知の時に知っておきたい、わかりにくい病院用語。解説します
病院の言葉って、独特です。病院で説明を受けたけれど、はっきり理解できなかった、難しくてよくわからないって感じたことありませんか? 特に、がんなどの大きな病気の時はなおさら、精神的に動揺し、いつもより言葉の意味を理解しにくくなっています。
また説明の際は、日常使わない病院独特の言葉が出てくることもあり、たまに病院に行く方などは、聞き慣れないことも多いと思います。そんな時に知っておきたい、病院の用語を集めてみました。
Contents
病院用語に、なぜ聞き慣れない難しい言葉が多いのか?
病院で使われる言葉に、なぜ聞き慣れない難しい言葉が多いのか、というと、記録するためです。
臨床(実際に診察する現場)には常に正確さが求められるため、エビデンス(証拠となる記録)が重要。また病状やデータを記録し比較することで病状を診断しますし、たくさんの人がかかわるので誰もが見てわかる記録が重要になります。
つまり、カルテや病状記録などの小さな紙に情報を余すところなくコンパクトに記録するために、エビデンスを蓄積するために、また正確に情報伝達するために、一般的には使われないような漢字や外来語に意味を凝縮して使っているのです。
インフォームドコンセント
【インフォームド・コンセント(informed consent)とは】
正しい情報を得た(伝えられた)上での合意」を意味する概念です。日本語訳では、「説明と同意」という語が使われています。医師が事前に診察について説明し、患者が診察内容に同意してから治療をはじめることなどを指します。
【解説】
聞いたことはある、なんとなくぐらいなら意味が分かるという言葉かもしれませんね。ちょっと長いこの言葉は医療従事者と患者のコミュニケーションについて言及した言葉です。一般的には、治療を受けるご本人やご家族が、口頭(必要に応じて文書を併用)にて治療方針の通知・説明を受ける、という方法が採られます。 つまり患者様は、自分の病状や病気のことについてよく知り、どういう検査や治療を受けるかを自分で決定する権利があるということです。
以前に比べ、病院へ行くと、きちんと状況説明、病気についての説明を受けることが非常に多くなりましたが、実は受けた説明に対し患者側も、合意するかしないかの表明をしていくことが必要である、ということです。
合意したということは、患者が病院側の説明、投薬、手術、検査などに、合意しました、というサインです。
病気という宣告で動揺も大きいこととは思いますが、わけも分からないうちに、病気についての説明や注意書きのような書面を渡されて、サインをしてしまわないよう気をつけましょう。 サインをするということは同意(承諾)したという認識でとられますので、サインは十分に理解して納得した上でする必要があります。
そんな患者としての注意ポイントと、良い病院選びのポイントについてまとめた記事はこちらです。
インフォームドコンセント関連記事▶︎ 良い病院とかかりつけ医の選び方とは?患者としてできることとは?チェックポイントのまとめ
セカンドオピニオン
【セカンドオピニオンとは】
主治医以外に、別のお医者さんの意見を聞くという意味です。主治医から提示された診断と治療方法を聞いたうえで、他の病院の医師から、病気や治療方法について再度アドバイスを受けることです。
【解説】
この言葉自体の認知度は上がってきている感覚はあります。病気の告知を受けた時、同時にその病院での治療方法を提示されますが、その治療方法はないのか、手術の場合は他に手術方法がないのか、自主的に調べたい、他の医師の意見も聞いてみたい、と思うことがあるかもしれません。そういう時は、今かかっている医師へセカンドオピニオンを受けたい旨をきちんと伝えて相談しましょう。検査資料を貸してくれる場合もあります。なお、セカンドオピニオンは「意見」を聞くことです。そのまま治療に入るわけではありません。
インフォームドコンセントもそうですが、自主的に積極的に医療にかかわる患者側の姿勢、納得して受診することの大切さが見られる言葉です。
エビデンス
【エビデンスとは】
証拠、という意味です。根拠となるようなデータや裏付け、検証を指します。
【解説】
薬や治療方法、検査方法など、医療では常に研究検証が行われています。エビデンスがある治療、というのは、この治療法がよいという証拠がある治療、と言い換えられます。ビジネス上でも普及してきたこの用語ですが、医療現場でも使用されることがあります。
既往歴(きおうれき)
【既往歴とは】
病歴のこと。今までにかかった病気の記録。
【解説】
患者さんの過去の体に関する記録は、今後の治療の大切な手がかり。大切なデータです。初診の問診票ではたくさん書く項目があってめんどくさいという気持ちも出てきてしまうかもしれません。そこはご自身のお体のためにぜひ小さなことまでご記入いただければと思います。
「大きな病気にかかったことはありますか」という表記を見たことがある方もいるかもしれません。大きな病気というのは人それぞれが感覚が違うかもしれませんし、そのせいで「これは小さな病気だからこの程度まで書けばいいか」と省いたりせず、できれば履歴書を書くような気持ちで、問診票にご記入ください。
アレルギー反応、遺伝性が高い病気が血縁者にいるか、出産の経験等、すべてにも同じことが言えます。
化学療法(かがくりょうほう)
【化学療法とは】
薬を使ったがんの治療法。
【解説】
かがくりょうほう、という言葉はテレビなどでも聞いたことがあると思います。科学ではなく、化学です。ただそれが何を指しているのか?というと、化学=薬、と結びつかないこともあるかもしれません。抗がん剤は化学療法です。
がんの治療には、3つの治療方法があります。3つを比較するとわかりやすいですね。これら3つを合わせての治療になることが多いがんの治療。医師との相談を密に取って納得の治療を受けてください。
1、外科治療:手術する治療法
2、放射線治療:放射線を使った治療法
3、化学療法:薬を使った治療法
寛解(かんかい)
【寛解とは】
症状が一時的に落ち着いて安定した状態。
【解説】
かんかい、と音で聞いても、漢字を見ても、なかなかその様子がわかりづらい言葉のひとつです。これは、病気の症状が一時的に軽くなったり、なくなったりしいてるが、完治=治癒(ちゆ)はしていない状態を指します。例えばがんは、5年生存率という数値で治癒状態をはかります。がんは転移や残りがあると5年以内に再発する率が高いのですが、5年以降なければ再発は少なく、そこではじめて治った、とみなしていきます。
浸潤(しんじゅん)
【浸潤とは】
がんなどの患部(腫瘍部しゅようぶ)が、どれぐらいの深さ、広がりがあるかを示す言葉です。
【解説】
その病気の進み具合を示す進行度(ステージ)という言葉は聞いたことがあるでしょうか。浸潤は進行度を図る指標の一つです。例えば、がんを事例にとると、浸潤はその場でどのぐらいの深さと広がりがあるか、転移はその患部以外の体内への広がりがあるか、を示す用語です。
浸みて(しみて)潤う(うるおう)を書きますが、その腫瘍がどのぐらいの深く浸みこみ、広がっているかという状態を指しています。
予後(よご)
【予後とは】
見通しのことです。今後の病状について医師が判断した見通しを指しています。
【解説】
よご、という単語は、今後の見通しを指すのですが、使う人によって今後の見通しではなく余命を指す場合もあるようです。例えば予後1年、という場合、良くなるまで1年かかるということなのか、余命が1年とみなしているのか、これは発言した医師や関係者に聞き直すことをおすすめします。
炎症
【炎症とは】
からだに侵入してきた最近やウイルスから守るために、からだの一部が熱を持ち、はれたり痛んだりしている状態。
【解説】
からだは有害なものの侵入や刺激があると、白血球が侵入から守るために攻撃しますが、その攻撃に使用されているエネルギーが熱や赤みとなって発熱という形をとります。また痛みもあります。白血球が勝つと炎症は徐々に止み膿として出たり赤みが引いたりします。皮膚炎やアレルギーも、外部からの物質に反応している炎症状態です。
ポリープ
【ポリープとは】
胃、腸、声帯、など内臓の内壁や粘膜、また皮膚などにできる、突起(とっき)形のできもののこと。
【解説】
胃と腸の内壁にできたできものは、良性と悪性とがあります。腫瘍(下記参照)と同じです。良性のものは、そのまま置いても大きくなったり広がったりしないと判断されたものです。悪性のものは進行したり、大きくなったりする可能性があるので、手術などの治療を行って体外に切除します。小さいうちは内視鏡での切除の方法があり、驚くほど簡単です。ポリープががんになる可能性については医学的にまだわかっていない部分があり、ポリープの場所、大きさなどによっても見解は異なるところですので、もしポリープと言われて気になることがあったら主治医にどんど質問しましょう。
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腫瘍(しゅよう)
【腫瘍とは】
体内のある部分で、細胞が異常に増えてかたまりになった状態を指します。
【解説】
腫瘍しゅよう、漢字で書くと見慣れないですが、音としては知っている言葉だと思います。腫れる(はれる)と、できものを示し、胃潰瘍(いかいよう)などにも使われる「瘍」という漢字そのまま意味です。脳腫瘍、悪性腫瘍、など場所や状態と一緒に使われる言葉です。
腫瘍には、良性と悪性があります。良性か悪性かは検査で判断されます。良性の場合は湿潤や転移がない、つまりそれ以上大きくならず、進行しません。悪性とは「がん」や「肉腫」のことで下記に詳しく記載します。
悪性腫瘍
【悪性腫瘍とは】
体内のある部分で、細胞が異常に増えてかたまりになった状態のものの中でもすぐに治療が必要な腫瘍
【解説】
良性がそれ以上大きくならない、ということに対し、悪性は逆に大きくなり、その場でも体中にも広がる可能性があるものを指します。ですから手術などで取り除くことが必要になるのです。
また悪性腫瘍のうち、皮膚や粘膜からできている腫瘍を「がん」といい、骨や筋肉や神経からできているものを「肉腫」といいます。悪性腫瘍とがんと骨肉腫は同じ病名ということが言えます。
腫瘍マーカー
【腫瘍マーカーとは】
がんがあるかの目安になる検査の「数値」のこと。
【解説】
がんにかかった細胞からは、特殊な物質が血中に流れ込むのですが、その物質を血液検査で計測した値を腫瘍マーカーといいます。ペンや検査器具、腫瘍のある場所ではありませんのでご注意を。
がんの種類によって、血中に交じる特殊な物質の量は異なっており、目安の値もそれぞれにあります。腫瘍マーカーが高いと他の検査で詳しくがんの有無を調べていきます。
この値に対する誤解は様々あるようです。以下に上げたものが、正しい表記です。
・値の高い、低いは個人差がある。値がすべてではない。正常値=治癒ではない。
・値が高いからといって、より状態が悪いわけではない。
・値が高いからといって、進行度とは関係ない。
自己判断は危険な数値です。わからない部分については、主治医や看護師さんに聞きましょう。
まとめ
いかがでしたでしょうか。医療は専門性の高い分野ですので、まだまだ普段聞かないような難しい言い回しはたくさんあると思います。当サイトでも難しい専門用語で病名を解説しているものもあるかと思います。
もし気になる用語が病院で出てきたら、主治医や看護師さんなどに聞いてコミュニケーションをしてみてください。病院では普段から、しかも長い間使っているので、患者が分からないということが伝わっていないことも多々ありますよ。メモして後から聞くのもおすすめです。