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健康診断で「肝臓が悪い」「肝機能障害がある」と言われたら必ずすべきたったひとつのこと

 2016/03/03 コラム 予防 病名
この記事は約 5 分で読めます。
肝機能障害

健康診断で「肝臓が悪い」「肝機能障害がある」と言われたら必ずすべきたったひとつのこと

健康診断で、突然に「肝機能障害がある」と告げられて・・・。

寝耳に水。体はどこも痛くない。診断結果って本当なの? という時に、実際に体の中で起こっている事、これから注意すべき点をまとめました。

わかりやすい症状がないからといって放置しようと思われている方がいらっしゃいましたら、是非お読みください。

無症状なのに健康診断で「肝機能障害がある」って言われたけれど・・・

ご本人は無症状なのですが、健康診断や内視鏡検査、手術前の検査でたまたま「肝臓が悪い」、「肝機能障害がある」と指摘されることがあります。しかもその指摘を受ける方は結構多くいらっしゃいます。

医者は何を見て「肝臓が悪いのか」を判断しているのかといいますと、血液検査の数値の中のGOT GPT 、γ-GTPALPT-BilTTTZTTなどの値が高いかどうかを見ています。これらの検査項目は、肝臓の働きが正しく働いているかを表しているものです。

例えば、GOT GPT は肝細胞が壊れる際に上昇する酵素の名前で、肝臓の細胞にはこれらの酵素がたくさん入っており一生懸命働いています。ところが肝細胞が壊れると、これらの酵素が血液中に漏れ出てきて、血液中のGOT GPT の値を上昇させるのです。値が高ければ高いほど、たくさんの肝細胞が壊れていることになります。

ですので、この数値が異常に高い時に、「肝臓が悪いですね」とお話しするというわけです。

検診

沈黙の臓器、肝臓。検査反応が出たらすべきたったひとつのこととは

肝臓が悪くなる原因には、ウイルス、薬剤、アルコール、自己免疫などいろいろあります。原因によっては重い肝臓病である肝硬変へと進行することもあります。

肝臓に関連する病気の怖いところは、無症状なところです。痛みもない。沈黙の臓器と呼ばれるゆえんです。症状が出る頃にはすでに病気はかなり進行しています。

このようなことから『肝臓が悪い』と言われたら、症状がないからといって決して安心しないでください。そのような結果が出たらすべきことはたったひとつ。それは精密検査を受けること。そして手遅れにならないうちに、適切な治療を受けること、です。

肝臓って何をするところ? 肝臓の重要な働きとは

肝臓は、おなかの右上あたりにある大きな臓器です。重さは約1.2kg。

主に代謝の中枢として活躍します。代謝とは生命を動かし維持させる機能。栄養をエネルギーに変える、というのが代謝の役割です。肝臓では、三大栄養素(糖,タンパク質,脂肪)やビリルビン,ホルモンなどの代謝を行なっています。そのほかに血液の粘性度合いの調整や解毒も担っています。

それぞれ、どれもなくてはならない、重要な働きです。詳しくみてみましょう。

【糖代謝】

体の維持や運動には絶えずエネルギーが必要です。エネルギーとして利用できる最も重要な物質は糖質である「グルコース」です。食後は必ず血糖が上昇しますが、血糖が上昇するとグルコースはまず肝細胞内にグリコーゲンとして蓄えられます。

そして時間がたって血糖が下がると蓄えられていたグリコーゲンが分解されてグルコースになり、血糖を調節しているのです。

【タンパク質代謝】

肝臓は、腸から吸収したアミノ酸からタンパク質や血液を固まらせる因子(凝固因子)を合成しています。タンパク質は血液の膠質浸透圧の維持、物質の輸送、酵素反応、血液凝固などに関わっており、中でも「アルブミン」は血管内の浸透や物質の輸送に関係しています。

肝機能障害になり、血液中のアルブミンの濃度が下がると浸透圧が維持できなくなり水が血管内に漏出し浮腫みや腹水などの症状が出てきます。

【脂肪代謝】

脂肪の代謝に関して、脂肪酸,中性脂肪,コレステロール,リン脂質などの脂肪は肝臓が合成します。

【ビリルビン代謝】

赤血球が壊れて出てくるビリルビンは肝臓の肝細胞に取り込まれ胆汁として胆管に排泄された後、十二指腸に流れ込み消化管に排出されます。そこで食物と混ざることで便を黄土色にします。

肝障害や胆管の流れが悪くなる(胆管結石,胆管腫瘍,胆管の炎症など)と胆汁の流れが悪くなり血液中のビリルビンが濃くなり黄疸を呈します。初期に黄疸が目立つのは眼球結膜です。また尿の色も茶系が濃くなります。

肝臓の重要な働き2 血液の凝固と解毒

【血液の凝固】

先ほど言ったように、肝臓はアミノ酸から血液凝固に関わっている「凝固因子」を作っています。そのため、肝障害がひどくなると凝固因子が作られなくなり低下してしまい、出血しやすかったり、血が止まりにくくなります。

【解毒】

薬物,アルコール,毒素など体外から進入した物質(毒素)を代謝して無毒にする役割もあります。

そのため、肝機能が低下すると、生じた代謝物質(アンモニアなど)が血中に蓄積されてしまいます。これが脳に達すると精神障害をも引き起こす原因になります。

放置は危険です

上記の通り、肝臓は、体にとって中枢的な大事な役割を担います。「肝腎要かんじんかなめ」という言葉の中に、肝臓という名前が入っているほどです。そんな重要な働きをしているのに黙って黙々と働きます。かなりの縁の下の力持ち加減です。

健康診断で「肝機能障害があるかも・・・」と言われた皆さん、肝臓は無症状だからといって放置すると大変な臓器です。さらに症状が出る重症化すると、体に出る症状はかなりの重症と複合症状がみられ、きつい状態になります。数値の異常は、無口な肝臓からの絶好のサインです。あなたの大切な体のために、大切な未来のために、ぜひ放置せずに検査に行きましょう。

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ナオル

ナオル

こんにちは。日本を健康にすべく健康惑星からやってきたナオルです。

僕、こう見えて医者なんです。人間の体って面白い。特に、地球上生物の栄養摂取と排泄の仕組みは興味深い(僕たちは食べませんから)。そんなわけで、専門分野は消化器、肛門疾患です。今日も日本中から集めた論文や臨床に基づいた確かな情報をお届けします。

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