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手術するのか、しないのか。日帰り手術か、それとも短期入院がいいのか・・・アフターケアなど徹底比較!

 2016/03/11 コラム 治療
この記事は約 8 分で読めます。
手術

昔は入院が必須だった手術も、現在では症状によっては日帰り手術が可能なものが増えています。日帰りと入院は、どちらがいいの?何に気を付けるといいのか?そうお考えの方のために、日帰り手術のあれこれ、比較検討してみました。

日帰り手術の条件

日帰り手術とは手術当日に病院へ来院し、手術を施行した同日に帰宅する手術のことです。これには『Day Surgery』というと24時間以内に退院する(1泊入院を含む)という意味が含まれることがあります。

日帰り手術と入院を比べる前に、日帰り手術には以下の条件についてクリアする必要があります。

1、日帰り手術がリスクになるような合併症がない

2、年齢によるリスクがない

3、患者さまやご家族が日帰り手術を理解した上で希望している

4、医師、医療スタッフのすすめに患者さまが納得し、協力がある

5、帰宅後の生活に問題がなく、介護や介助が最小限である

6、来院、帰宅に付き添える家族や友人がいる

医療機関が自宅に近いこともしくは手術後に異常があった場合にすぐに対処できる位置にいることが出来る方が対象になります。また重度な合併症(心臓、肝臓疾患、糖尿病など)をお持ちの方や高齢者、一人暮らしの方は日帰り手術が適さない場合があります。

また日帰り手術か入院手術かの決定は使用する麻酔量の違いでもありますので、医師との相談が必要です。

日帰り手術にメリットのある方とは

メリットの最も明らかな点は『入院による時間的拘束の短縮』でしょう。仕事や家庭環境において入院が難しい方や入院による精神的な苦痛の軽減、また入院費用の経済的負担が軽減される場合もあります。

日帰り入院の前に、まずここで手術をしなければ治らない(治りにくい)疾患に対し、患者様がその疾患で日常生活に煩わしさを感じているかどうかが重要です。

薬の使用によりなんとか日常生活を送れている方に対して、手術を無理やり勧めることは医師にとって最良の策とは言えないと考えます。ですが、疾患に悩まされている方にとって手術が最良の策と考えた場合、そして患者様が手術を希望した場合に、

・仕事が忙しくて入院できない

・介護や子供の世話で家を空けられない

・周りの人に知られずに治したい

といった理由で手術に踏み切れないと悩んでいる方に、日帰り手術は有効であるといえます。

どんな病気の手術が日帰り手術でできるのか?

全国の総合病院や各分野の専門病院で日帰り手術が行われています。代表的な疾患は、内痔核、鼠径ヘルニア、白内障、下肢静脈瘤、多汗症などです。その適応とする疾患は、病院によって様々ですので確認してください。

術後の対応・・・日帰り入院VS短期入院比較

一般に『日帰り手術』は日帰りができるレベルの治療で済んでいるので入院手術に比べれば身体に負担の少ない手術といえるでしょう。

しかし、すべての手術が身体に負担なく行われるわけではありません。日帰り手術をされた患者様が安心して自宅で過ごすために担当の医師はどのような点に気をつける必要があるでしょうか。手術後に入院体制のない医療機関は主として電話による対応が一般的のようです。

日帰り手術後、一定の帰宅基準を満たすまで回復をしたと医師が認めたら創部の最終確認後に『帰宅してからの注意事項』についての資料を手渡す施設が多いようです。

日帰り入院 短期入院
術後 休憩後、電話対応

『何か変わったことや心配なことが起きましたらお電話ください』

『決められた時間に現況をご報告ください』

術後36時間以内に『いかがですか?お変わりないですか?』といった内容

病院での回診。

出血、合併症などの場合対応できる。

 

術後の合併症とは?

日帰り手術後の合併症に関しては以下の3点について、考慮が必要です。

① 通常でも起こりえる突発的な疾患が手術という非日常的なイベントにおいて出現しやすくなる

② 手術そのものにおける侵襲

③ 手術時の麻酔による影響           

それぞれについて、詳しくみていきましょう。術後の合併症

術後の合併症・・・突発的疾患

通常でも起こりえる突発的な疾患が手術という非日常的なイベントにおいて出現しやすくなるの詳細です。

これは大きな疾患として心筋梗塞、肺梗塞、呼吸不全、脳血管障害などが、小さな疾患として頭痛、めまい、嘔気、風邪症状があげられます。もちろん大きな疾患の出現率は稀ですが、医療側はそういう疾患でも常に念頭に置き注意や対応を怠ってはいけません。

術後の合併症・・・手術後の痛みや出血

手術そのものにおける侵襲の詳細です。

やはり術後は、出血(腹腔内損傷含む)や麻酔後の痛みがでますので、痛みについての管理が必要になります。

術後の合併症・・・麻酔による影響の考慮

手術時の麻酔による影響の詳細です。

局所麻酔では麻酔による影響は最小限に限られるでしょう。しかし局所麻酔にて管理できる疾患は限られます。全身麻酔、静脈麻酔、脊椎麻酔、その他神経ブロックにおける合併症は術後疼痛(いたみ)の管理、術後の痛みにおける説明はとても大事です。術後帰宅後に本人の予想を超える痛みの発生や、その場合の連絡先が不明確であると、その患者や家族はパニックに陥ることも少なくなく、結果的にはそれほど重大でない疼痛でも心因的に心配が先立ち大騒ぎになることもあります。術前に対策を記したものを書面にて受け取っておくことは大事なことです。

術後に起こる痛み、鎮痛剤について

術後の痛みについてみていきましょう。

手術後に起こる痛みにはいくつか種類があります。まず手術した場所そのものの痛みと、外科的な処置による疼痛、患者の不安から来る不快、術後合併症に関連した痛みがあります。外科的処置による痛みは個人差や手術の程度によっても異なりますが、鎮痛薬の量を数日分処方されるのが一般的です。

【代表的な鎮痛薬】

1)アセトアミノフェン・・小児科の治療にて最も一般的に使用される穏やかな鎮痛薬です。

2)非ステロイド消炎薬・・呼吸抑制、腸管運動低下、嘔気などの副作用が少ない為、子供の小手術後にも有効であり、現在最も一般的に使用されている薬です。

3)フェンタニル・・強い鎮痛効果があります。ただし術後の悪心の発生率が高く在宅での使用の難しさがあります。

4)その他・・局所麻酔薬の局所注入や疼痛部の冷却、精神的な補助財や眠剤もよく使用されます。

【麻酔後頭痛】

脊椎麻酔や硬膜外麻酔における硬膜穿孔にてみられるものと全身麻酔の際にみられるものに大別されます。脊椎に際し、施行医はなるべく細いサイズの針を使用してはいるものの脊髄液は脳の方と通じており脊髄液の漏れが脳を揺らすことにより頭痛が起きてしまうのです。もちろんすべての方にというわけでなく、頻度的には低いもの(25G – 2.5%、27G-0.4%)です。

しかし硬膜外麻酔に関しては通常太い針を使い(外筒)その後、カテーテル挿入や、薬の注入をする場合が普通であり、外筒が硬膜を突き破ってしまうと高頻度で頭痛が起きやすくなります。

全身麻酔後頭痛は、手術における不安が大きな要因のようです。担当医師における術前後の対応いかんで発生頻度を低下させられるものと考えられます。また高血圧を持っている方は緊張などにより血圧が高まり頭痛の大きな原因になりますので迅速な対応が必要です。麻酔における頭痛はいずれも心配なものではありませんが、頭痛が強い場合は心因的にも不安が強くなるため医療側としては患者様の話をよく聞き対応しなければいけません。

【筋肉や四肢の痛み】

筋弛緩薬や睡眠導入剤の使用における手術時の不適当な体位が組織の圧迫虚血(血の巡りが悪くなる)や神経の圧迫を引き起こします。

【咽頭痛】

全身麻酔の中でも気管内にチューブを挿入する麻酔にて、咽頭付近や気道の機械的損傷、乾燥したガスの吸入、吸入麻酔薬の刺激が大きな原因です。

【下腹痛】

脊椎麻酔における排尿障害(尿がうまく出ない)の際によく見られます。麻酔自体は効果がなくなっているものの尿意切迫や排尿のきっかけがうまくつかめず尿が膀胱内に緊満すると下腹部の痛みが出ます。導尿を1回することにより後は問題がないことが多いです。

また、手術時における腸管の牽引等が腹痛の原因になることもあり、腸の蠕動(動き)を和らげてあげる処置が必要な場合があります。

【胸痛】

手術中の体位によって下肢の深部静脈の血栓(血の塊)が出来やすくなり、その血栓が臓器に飛んで血管を詰まらせると血流障害からさまざまな症状が出ます。特に肺の血管に詰まる“肺梗塞”や“心筋梗塞”は重篤な合併症です。この血栓が飛ぶことを避けるために医療施設ではさまざまな努力をしています(弾性ストッキング)が、100%防止できるものではなく、仮に重篤な合併症が起きたときは迅速な対応が必要です。

検討と相談してから手術に臨む

医師に相談

日帰りが可能だということ自体、手術のレベルは入院手術に比べて軽度ということですが、日帰りでも手術ですからすべての術後のレベルを考慮しておく必要はあります。

利便性をとるか、安心を取るか、レベルは軽度なのか。疑問がある場合は医師に相談しましょう。またご自身が入っている保険内容をじっくり見返してみると驚くほど負担費用に差額が出ますので、ぜひチェックされることをお勧めします。

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ナオル

ナオル

こんにちは。日本を健康にすべく健康惑星からやってきたナオルです。

僕、こう見えて医者なんです。人間の体って面白い。特に、地球上生物の栄養摂取と排泄の仕組みは興味深い(僕たちは食べませんから)。そんなわけで、専門分野は消化器、肛門疾患です。今日も日本中から集めた論文や臨床に基づいた確かな情報をお届けします。

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