冬はストレスピーク?冬に増える意外なストレスと病気

仕事はじめから約1週間。そろそろお正月気分も抜けて「今年も本格始動だ~」…と頭では思っていても、なんだか体がついてこないと感じている方、いらっしゃるんじゃないでしょうか。
人間関係も、食事量も、仕事量も、寒さも加速する年末。お正月のお休みで、ほっとひと段落したその後は、駆け抜けた師走や年末年始に膨らんだ冬のストレスが出始める時期でもあります。
冬には冬特有のストレスがあるために、冬って病気が増える時期なんです。疲れた体は、だるさ、やる気の停滞感しかしほっておくと抵抗力が下がってきて、その先に待ち構えているのは・・・インフルエンザ、心疾患!?冬に増えるストレスと病気をまとめました。知っていることで防げる病気もあります。無理せずこの冬を乗り切っていきましょう。
Contents
冬のストレス1:寒さ → 起こる病気・症状:心筋梗塞、関節痛
血管と筋肉と関節
冬の朝、一歩外に出るだけで、思わずぎゅっと身が縮まりますね。気温が低いということだけで、体には負荷=ストレスがかかっています。
外気の低さを感じると、体は体温を確保するために、熱を逃さずにため込もうとします。血管を縮めて血流を落とし、熱の放出を防ごうとするのです。すると、筋肉に血が行き渡らないために筋肉が固くなってしまいます。血管だけではなく、私たちは思わず姿勢を丸めて筋肉をギュッと縮めますが、縮めることで体は熱を保とうとするのですね。ですから、普通に過ごしているだけでも体は緊張して力が入り気味になっています。肩こりや背中のハリを感じるのも、夏に比べて冬の方が多くなりますよね。
筋肉が硬くなると、連動して負荷がかかるのが関節。そのために冬は関節痛が出やすくなるのです。
気温差
外が寒いだけではなく、外気温と室内の温度差が大きくなります。温度差が起こると、体は体温を適温に調節しようと、血流や血圧を変化させます。急激な血圧の上下動は、体に負荷がかかります。急に血圧が上がると心臓に負荷がかかるため、心不全や心筋梗塞、狭心症にみられる心疾患が出やすくなります。
日常生活の中で温度差が出やすいひとつに、お風呂があります。熱いお風呂が好きな方は要注意。脱衣場との温度差が高い熱いお風呂に長時間入浴することは、心臓に負担がかかるだけでなく、脱水により脳血流が悪くなったり、熱中症の症状が出てきます。入浴中の死亡事故、年間の6割は11~2月の冬期間に起こっているんです。入浴前に水分を取り、脱衣場を十分に暖房をして、あまり熱くないお湯に入るのが良いでしょう。
冬のストレス2:日照時間が減る → 起こる症状:落ち込み、過眠、冬季うつ
冬にだけ起こるうつ病がある、ということをご存じでしょうか?
「冬季うつ」は季節性感情障害(SAD)と呼ばれる病気のひとつで、1984年に病名がついた症状です。
これは、日が短くなる冬や春先あたりまでの間だけ、うつ症状が出るものです。夏は反対に躁状態になる人が多くなるとのこと。通常のうつ病と大きく違うのは、季節性がはっきりしている他、不眠ではなく過眠になるということ。動物の冬眠みたいですね。また炭水化物・甘いものを多く摂取したくなるという特徴もあるそうです。
確かに日光を浴びることで、人間の「精神の安定・意欲」に関わる神経伝達物質であるセロトニンが生成されると言われています。セロトニン生成には栄養や運動も必要なのですが、日照時間が少なくて、運動不足になりがちな冬は、脳内のセロトニンの量も減るのかもしれません。
精神的な落ち込みは、気力でなんとかしよう、とか、自分がおかしいと我慢したり自分を責めたりしがちですが、うつ病には薬があり、治る病気です。薬を使いながらいろいろな治療法をためす、ということが可能な病気です。一人で悩まず、専門医に相談してみることをお勧めします。
冬のストレス3:暴飲暴食 → 起こる病気・症状:下痢、胃炎、腸炎、痔の悪化
胃痛の3大原因のひとつ暴飲暴食(胃痛の3大要因は、ストレス、暴飲暴食、ピロリ菌です)。特にイベント続きのお正月は、おせち、お餅、ケーキや、お酒、お酒に合う味付けの濃いおつまみ、など、いつもより量が多く、塩分やカロリーが高い食事内容が続きやすくなります。
食べ過ぎると胃腸が疲れるとはよく言いますが、連日の食べ過ぎ、飲み過ぎが続くと、むねやけ、膨満感、胃痛・胃炎、消化不良による下痢などに発展していきます。
ちなみに、食べ過ぎた時の胃ではこんなことが起こっています・・・。
・胃には伸縮性があり、大量に食べ物が入ると伸びることで面積確保をして対応します。伸びている時には胃壁は引き伸ばされ胃壁の筋力が低下してしまうため、合わせて消化運動機能が低下します。
・大量の食べ物に比例して消化のサインが出ているために胃酸が大量に出て、胃壁が荒れます。
・塩辛いものを大量に食べると、塩分により胃の粘膜の水分が吸い出される(漬物と同じ構造)ために粘膜が傷つきます。
まとめると「食べ過ぎ時の胃は、動きが鈍くなるうえに炎症を起こしている」んです。いいことがないですね!
また師走は忙しいために、早食いになったり、食事を取る時間が不規則になったり、宴会ではダラダラ長時間食べるなど、通常とは違うリズムで食事をすることも増えると思います。リズムが崩れると対応が追い付かなくなり、胃の運動障害や機能障害につながっていきます。
胃の強い痛みは病院でちゃんと見てもらうにしても、胃そのものを「疲れている人」と見立てて、規則正しく穏やかな生活で休ませてあげるいたわりのイメージを持つと、胃も復活してきます。
痔の悪化については、理由があって最下部に詳しく記載しましたのでご覧ください。
冬のストレス4:脱水 → 起こる病気・症状:頭痛、吐き気、冷え、便秘、心筋梗塞(突然死)、狭心症
冬は、空気が乾燥して湿度が低くなります。すると汗などの水分が空気中に蒸発しやすくなります。冬は水を飲むよりも、温かいお茶やコーヒーを飲む機会が増えるのかもしれませんね。種類にもよりますが、お茶やコーヒーは利尿作用があり、水分が体外へ放出されます。夏は汗をかくので意識的に水分を摂取するのですが、冬は見過ごされがちです。こうして冬は自覚なしに脱水気味になることが多くなります。
脱水とは、体重に対する水分の割合で見ます。体重の1.7~3.3%以上の水分がなくなると血液濃縮が起こり、4%の水分喪失で運動が困難になります。症状としては、だるさ、頭痛、吐き気などが出て進行すると意識を失います。4%台の激しい脱水は、大量の汗をかく運動などがある場合に起こってきます。冬の日常生活で意識喪失までに至ることはないかもしれないのですが、頭痛レベルでは頻繁に起こっているのではないでしょうか。
脱水になると、体のいたるところに影響が出ます。例えば便秘がちになります。また血中から水分が少なくなり血の濃度が濃くなります。濃度が上がってドロドロになった血は血管を通りにくくなりますし、通りながら血管に詰まりや障害物があるとドロドロのために血流が止まってしまう、という結果になります。中でも急性心筋梗塞、いわゆる突然死と呼ばれる状態は、冬の朝の起床1時間以内に起こることが多いのが特徴です。急性心筋梗塞で亡くなる方は1年間に約4万人。働き盛りの40代後半から50代男性に多くみられ数も増えています。
こたつ寝で突然死が過去話題になりましたが、これも脱水による心筋梗塞です。暖房器具で温め続けられた状態で寝ると、必要以上の発汗があり血のドロドロにつながります。
また血液がドロドロだと末端まで血流が流れないために冷えが起こったり、血液が届かないことで栄養が行き渡らないために体のパフォーマンスが低下するために、からだの倦怠感が引き起ってきます。
さらに冬によく起こる静電気ですが、水分を取っていると静電気でバチッ!となるあの現象が起きにくくなると言われています。静電気は、体の放電が自然に起こりづらいために電気が帯電している状態です。静電気が起きやすい人は血流が悪くなって体内循環が低下していることと比例しています。水分を取って体内血流を円滑にするのは静電気防止になると言えるでしょう。
冬の脱水は、夏の脱水に比べ見過ごされがちです。水分をうまく取る方法は、常温の水を、長い時間をかけて少量ずつこまめに飲むこと。猫や犬の飲み方をイメージしてみてください。一気にごくごくは飲みませんよね。大量に急に水を飲むと下痢になることもあるので注意です。
水のほかに、経口補水液、お味噌汁、果物なども体内に水分を摂取できるものです。うまく取り入れて水分を取っていきましょう。
冬のストレス5:上記を総合して → 起こる病気・症状:インフルエンザ、ノロ、ロタなどのウィルス性疾患、痔の悪化
上記に挙げてきたような原因から、全体的に体の抵抗力が下がった結果、待っているのがインフルエンザ、ノロ、ロタなど冬に活発になるウィルス達です。低温と乾燥を好むウィルスは、抵抗力が下がる人が増える、という冬の条件と相まって、猛威をふるいます。子供は大人に比べてウィルスに感染しやすく、小さいお子さんがいるご家庭では全員がピンポン感染して大変だという話はよく聞きます。インフルエンザの流行は毎年の受験シーズンとも重なって、親子でストレスフルな状況にいる場合もあるでしょう。
急性に発病し、熱、下痢、嘔吐が出ると、気を付けたいのは脱水です。体の外に出ていく水分に対して、摂取できる水分が追い付かない場合は多いですので、病院で点滴を受けたり、経口補水液、湯冷まし、などの水分を取るように心がけましょう。
ご家族間での感染予防は難しい部分があるかとは思いますが、手洗い・マスクをする、消毒をしっかりする、食べ物の加熱をしっかりする、などがあげられます。
また、日本人の3人に1人は持っているといわれる痔も、冬に悪化する症例が多くみられます。痔についてここで解説する理由。それは、今までにあげた冬のストレスのすべてが、痔の悪化につながっていくから、なんです。
・年末年始のカロリーオーバーの暴食や、体を温めるための香辛料の摂取→痔の原因
・体に炎症を起こすスイッチであるアルコールの摂取による炎症→痔の原因
・ストレスによる抵抗力の低下から粘膜が弱くなることで起こる炎症→痔の原因
・冷えによるうっ血から繋がる肛門周辺の障害→痔の原因
・脱水によって便秘・便がかたくなる→痔の要因
そう、すべてが痔の原因なんです。
痔は市販薬で対応する方も多いと思いますが、市販薬は長く使い続けると悪化を引き起こすケースがあります。市販薬使用の目安は、外用薬で約10日、内用薬で約30日。それ以上長引くようでしたら、病院での診察をお勧めします。恥ずかしさもあると思いますが長引く症状には、痔の病巣部の根本治療が必要になっているケースや、大腸がんであるケースが多くみられます。病院だと治療は確実です。
さらに詳しくはこちらの記事をどうぞ
▶ 痔の市販薬、何日飲み続けたら医者に行くタイミング?
まとめ
冬によるストレス、いかがでしたでしょうか。
2015年12月から従業員50名以上の企業を対象に職場でのメンタルヘルス対策としてストレスチェックを年に1度以上行うことが義務化されました。
労働厚生省が行なった調査では、仕事で強いストレスを抱えていると回答した労働者の割合は約6割にのぼり、過去1年間メンタルヘルス不調が原因で連続1か月以上の休業・退職をした人がいる事業所の割合は、全体の10%にのぼるという結果が出ています(2013年)。
国をあげてストレス対策に乗り出すぐらい日本の企業人はストレスを持っているんですね。
皮肉にもストレスチェックがはじまった冬こそ、ストレスが大きい時期。無理せず体も心も休め、冬を無事に乗り切っていきましょう。