【バドミントン/卓球編】名スポーツドクターに聞く!起こりやすいケガ

スポーツには、そのスポーツを長くやることで起こる、ケガや病気があります。「スポーツ障害」と呼ばれるこのケガについて、専門医であるスポーツドクターにお話をお伺いしました。種目別に連載でお届けしています。今回はバドミントン/卓球編です。
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◆スポーツ障害とは?
スポーツ障害とは、長い間スポーツを継続する中で、小さな力が繰り返し加えられることによって生じる障害のことを指します。ですので、ここには突発性、急性のスポーツ外傷は含まれません。
スポーツ障害について、またこの記事のコメントをいただいた、スポーツドクターである湯澤医師については、こちらでご紹介しています。
◆バドミントンで起こりやすい障害一覧
では早速ですが、バドミントンで起こりやすい障害について見ていきましょう。
バドミントンは競技として、俊敏で激しい動きが必要となるため、ケガも多くなりがちです。バドミントンでは以下のケガが見られます。
【アキレス腱断裂】
シャトルを追って瞬間的に後ろに下がろうとした時に発生しやすくなっています。
【足関節捻挫】
体の方向を変えようとする瞬間的な動作で足関節をひねり発生します。時に膝にも瞬間的な負荷がかかり、膝関節捻挫を発生することもあります。前十字靭帯損傷が多くなっています。
【肘関節捻挫】
テニスとは逆に内側を痛めやすいのが特徴です。
◆アキレス腱を鍛える2つの方法とは?
バドミントンで障害の起こりやすいアキレス腱。このアキレス腱を鍛えることってできるのでしょうか?
答えはイエス。アキレス腱って鍛えられるんです。
その方法をご紹介する前に、アキレス腱の仕組みについて少し見ていきましょう。「腱」とは筋肉と骨を連携している組織を指します。腱はタンパク質の一種であるコラーゲンからできています。人体にある腱の中で最も太いのがアキレス腱なのですが、実はスポーツにおいてもっとも断裂の多いのもアキレス腱なんです。アキレス腱は、断裂の際、激しい痛みが伴います。もちろん、断裂は避けたいものですよね。
その痛いアキレス腱断絶を防ぐために、そして選手生命にかかわるケガを防ぐために、この骨と腱を強化するための方法とはどのようなものなのか。方法を2つご紹介します。
まずひとつは、食事面からのアプローチです。食事では摂取したい栄養源が2種類あります。ひとつは骨の原料であり、筋肉の反応スピードにも影響を及ぼすカルシウム。もうひとつはコラーゲンの生成とトレーニングの負荷から体を守るホルモンの分泌に欠かせないビタミンCです。この2種類を不足なく摂取することは障害を防ぐ基本的な要素といえます。
次に骨と腱を強化するための方法としては、筋力トレーニングがあげられます。ゆっくりとした動作で筋肉に負荷をかけ筋力をつける、といった手法のトレーニングは、筋肉のみならず、腱、靭帯といった骨と筋肉の結合組織を強くします。筋肉には大きな負荷をかけることで筋力がつくのですが、同時に起こる筋肉の収縮によって、靭帯や腱にも刺激が加わることで強度が増します。そして骨では骨密度が高まります。
食事からのアプローチと筋力トレーニング。ぜひ試してみてください。
◆卓球で起こりやすい障害一覧
卓球では、ボールの衝突や転倒などでケガをする事はほとんどありませんが、細かくて激しい手足の動き、左右の身体のひねりなど卓球の特徴的な動きが原因で障害が発生します。
【腰】
腰の障害は最も多く発生するもので、筋肉の疲労から来る軽い腰痛のほか、腰椎分離症、腰椎椎間板ヘルニアと言った専門医の診察が必要なものもあります。
【膝】
激しいラリーで膝をひねってしまうなどで、靭帯損傷・断裂、半月版損傷など想像以上に大きなケガになる事もあります。
【肩】
無理な姿勢からくり出すストロークの反復で、肩周辺に障害を起こしやすくなっています。多いのは上腕二頭筋腱炎や腱板炎などです。
◆スポーツと握力の関係
卓球の上達のためのトレーニング方法はたくさんあります。初心者の基礎トレーニングから、下半身、体幹など各部位を鍛えるトレーニング。今回は、ラケットを握るための握力について注目してみたいと思います。
スポーツの種目によって、握力は重要な要素になります。握力とは、にぎる力。グリップを握るゴルフ、バットやゴールを握る野球、ラケットを握る卓球、いずれも、しっかりと握られていなければ、ショットやヒットなどを力強く打つことができません。
筋力がある場合、握力も高いという相関関係がある程度みられるのですが、握力を上げるためのトレーニングもやはり筋力トレーニングの一種です。まずは第一段階のトレーニングとして、ゴムボールを使ったトレーニングがあります。ゴムボールを握ったり放したりして筋肉に負荷をかける感覚をつかみます。ゴムボールは負荷が弱いため、慣れてきたら負荷を上げます。
負荷を上げるための筋力トレーニングは、腕のトレーニングです。ダンベルなどを持ち、手首の力だけで重りを巻き上げるように持ちあげ、またおろします。リストカールという名前の筋力トレーニングになります。
ただこちらも一度にやりすぎると筋肉や腱の炎症につながりますので、負荷と回数のバランスを見ながらトレーニングプログラムを組んでみてください。
◆まとめ・・・練習のし過ぎに注意して計画的なトレーニングを
練習のしすぎによるケガ。オーバートレーニング症候群とは、トレーニングによる疲労(肉体的、精神的の両者を指します)が十分に回復しないままトレーニングが蓄積されていくことにより競技の成果が低下し、慢性的疲労が常に出てくる状態を指します。
過度なトレーニング、過密スケジュール、不十分な休息、栄養不足などが原因となります。症状としては、慢性的な疲労感、頭痛、腰痛、発熱、腹痛、息切れ、不眠、うつ状態などがみられます。この症状の目安として、運動をとめてから10分以上しても息切れがする、運動した日の寝つきが悪く翌日の目覚めが悪い、すっきりしないなどがあげられます。
回復については、まず十分な休息をとること、個人に合ったトレーニング計画を立てることで可能になります。
対策としては、トレーニングが過度にならないように、個人の体調や身体能力に合ったものを計画します。プロスポーツ選手は毎日同じトレーニングを繰り返しているわけではなく、年間のトレーニング計画を立ててそれに沿って体を調整しています。筋肉の成長と組成からも、回復期も含めた視点から季節や体調に合わせたトレーニング計画を立てられるといいですね。