【サッカー編】名スポーツドクターに聞く!起こりやすいケガ

スポーツには、そのスポーツを長くやることで起こるケガや病気があります。これを「スポーツ障害」と呼びます。
スポーツ障害にはどういうものがあるのか、気を付けるべき点、予防ポイントは? 名スポーツドクターに回答いただくシリーズ、今回はサッカー編です。
Contents
◆スポーツ障害とは?
スポーツ障害とは、長い間スポーツを継続する間に、小さな力が繰り返し加えられることによって生じる障害のことを指します。ここには突発性、急性のスポーツ外傷は含まれません。スポーツ障害について、この記事のコメントをいただいた雑誌などでもご活躍されるスポーツドクター湯澤医師については、こちらでご紹介しております。
◆サッカーで起こりやすい障害一覧
サッカーは相手選手との接触や、転倒などによるケガが多いスポーツです。
ケガは足に集中するように思われがちですが、意外にも、手や腕に受ける外傷も多くなっています。
下表を見ると、腕の骨折がサッカー障害件数1位と出ています。これはタックルやヘディングの接触などで、転倒し手をついてケガすることが多いためです。
また、ゴールキーパーは相手選手やゴールポストへの衝突によって大きなケガをすることがあります。
サッカーで発生しやすい障害<13,737例>
1.前腕の骨折 ・・・・1658 件
2.足関節の捻挫 ・・・1549 件
3.手指部の骨折・・・ 775 件
4.下腿の骨折・・・・ 663 件
5.膝の捻挫 ・・・・・487 件
6.膝の打撲 ・・・・・487 件
7.手関節の骨折 ・・・431 件
8.鎖骨の骨折 ・・・・376 件
9.上腕の骨折・・・・ 374 件
10.手指の捻挫・・・・373 件
◆男女別トップチームの疾患別障害
次に競技時間の長いサッカートップチームの男女別、疾患障害の割合を見ていきます。
男女にほぼ差が見られず、上位から肉離れ(33%)、靭帯損傷(25~27%)、打撲・捻挫(6~10%)と続きます。比率もほぼ同様です。一般選手と違い、脚部の障害が多くなっています。
引用: 関 純ほか:外傷・障害の発生頻度ートップレベル(J).選手と指導者のためのサッカー医学、金原出版、2005.p109-119
◆サッカー特有の障害:オスグッドシュラッター病
オスグッドシュラッター病とは、スポーツなどのクラブ活動をしている12~13歳前後の成長期の男子によく起こる障害です。ひざ下にある骨がでっぱり、走ったりジャンプすると痛みます。サッカー特有の障害として代表的なものです。
【なぜ起こるの?】
原因は大腿四頭筋の過度の収縮を繰り返すことです。大腿四頭筋は、膝のお皿のところで膝蓋靭帯となってすねの骨の上端(脛骨粗面)とつながっているのですが、成長期ではその骨がまだ弱いため、大腿四頭筋の収縮力に耐え切れずすねの骨の上端がはがされたり、時には小さな骨折を起こすことがあるために起こります。
【どんな症状?】
痛む場所は膝の少し下あたりで、走ったりジャンプしたときに痛く、骨が少し出っ張ってくるので、そこに物が当たるだけでも痛みを感じます。
【治療法は?】
使いすぎが最大の原因なので、安静が一番適しています。
痛みが強いときは練習を3ヶ月位休み、痛みがそれほどでもなければ練習後に患部をアイシングしながら続ける事も可能です。また、下肢のストレッチ特に大腿四頭筋のストレッチを十分にやるのも予防として効果があります。
◆サッカー特有の障害:フットボーラーズ・アンクル
足首を背屈(そらす)、底屈(伸ばす)の繰り返しで足関節に少しずつ余分な骨が出来てくる障害です。衝撃性骸骨腫とも言います。こちらもサッカー特有の障害として代表的な障害です。
【なぜ起こるの?】
脛骨(スネの骨)の下端と距骨(足首の一番上の骨)が何度も衝突するのが原因となります。
【どんな症状?】
サッカーでは底屈で発生することが多く、アキレス腱側に痛みが出て足首が十分に底屈できなくなります。バスケットボールでは逆に背屈で発生し、足首の前面に痛みが出て十分に背屈出来きず、触ると余分に出来た骨の盛り上がりを感じます。どちらも捻挫の症状と間違えやすいので注意してください。
【治療法は?】
テーピングなどで足首の動きを制限してあげるのが有効な予防と治療となります。ただ、症状が進行すると余分に出来た骨は、折れやすく関節ねずみになりやすいので、その場合は専門医の診察を受けてください。
◆まとめ・・・足だけじゃない!手にも注意
いかがでしたでしょうか。サッカーの障害・外傷での1位が腕である、というのは意外な結果と感じますが、実際にサッカーをやっている方は、経験的にご存知かもしれません。ただし、習熟度や技術面が違うと、障害の部位が異なってくる様子がグラフから分かります。コーチ、監督の方の理解とサポートを受けながら、選手自身も予防に取り組んでいく。サッカーを楽しめる体づくりにお役立ていただけましたら幸いです。