【イクメン入門講座】その1・子供の病気サインの見つけ方

子育てに参加するパパ、増えてきましたね。イクメンという言葉もできて頼もしい限りですが、いきなり子供と対面しても「何を見ればいいのか?」と戸惑う人も多いと思います。
奥さんにしてみれば本能的にやっている育児、なかなかうまく言葉で説明できないことが多いもの。そんな奥さんに代わりましてdscopeがご説明します。
言葉を話せない赤ちゃんや子供を見る時には、観察ポイントがあります。このポイントを押さえると、ちょっとした態度や泣き方の変化から、赤ちゃんの病気を素早く発見しやすくなります。イクメンの皆さん、メモのご準備を!一緒にポイントを押さえていきましょう。イクメン入門講座第1回はじめていきますね。
Contents
子供の観察ポイントを17項目にわたり解説します
赤ちゃんや子供の世話や育児でまず大切なのが「見ること」、観察です。普段から子供をよく見ることで「いつもと違う」ことに気が付ける土台を作っていきます。
仕事で家にいる時間が少ない場合、難しいこととは思いますが、子どもの日常の状態を知っておくことからはじめます。ただここで気を付けたいのが、一緒にいて漠然と見るだけでは、「観察」にはならないということです。観察するには、押さえておくといいポイントがあります。
子供の日常を見る時のポイントについて、17項目ピックアップしました。次の章から、このポイントの何を見て行けばいいのかについて、ひとつずつ詳細に解説していきます。
観察ポイント1:顔(表情)、様子
まず、確認しやすい顔から見ていきましょう。体調の変化は、顔まわりによく表れやすいので、気が付きやすい部分でもあります。子供は、症状をうまく言語化できません。赤ちゃんなら、なおさらです。以下の点に気を付けて見てあげてください。
・顔色が悪い(青白い、黄色い、赤い)→顔色の詳しい解説は観察ポイント16:顔色をご参照してくださいね。
・ぼんやりしている
・ほかの子どもに無関心である、相手と視線を合わせない、笑わない、表情が乏しい、行動が奇妙である場合は、精神面の問題(自閉症など)である可能性もあります。
観察ポイント2:目
色、腫れ、目ヤニ、涙の量、目の動かし方、反応度合いなどが観察ポイントです。健康な時がどうか、もチェックしてくださいね。
・目やにが付いている
・赤い
・まぶたが腫れている
・涙目になっている
・まぶしがる
・目の動きに元気がない
観察ポイント3:耳
耳そのものの様子にプラスして、音を聴くときの様子も観察してください。
・耳だれがある
・切れている
・痛がる
・耳を気にする(耳を触る)
・さかんに耳を気にする場合は、中耳炎なとの耳の疾患の可能性があります。
・コマーシャルなどテレビの音声や、ほかの子どもの声にはよく反応しても、そのほかの周囲への反応が悪い場合は、難聴などの耳の疾患の可能性があります。
観察ポイント4:鼻
鼻づまりは呼吸(ポイント6にあります)にも関連してきます。いびきや詰まり、異音などを発するようでしたらかかりつけ医に相談しましょう。
・鼻水が出る
・鼻づまりがある
・くしゃみをする
観察ポイント5:口
赤ちゃんは色々なものを口に入れますね。歯の生えはじめは口の中を気にしたり、かんだりします。そういった様子に加えて、口の中も、見てあげてください。色、腫れや出来物などもチェックです。
・唇の色が悪い
・唇・口内を痛がる
・舌が腫れている
観察ポイント6:呼吸
息がしにくくなると、呼吸量が減ってしまいます。酸欠になると、ぐったり、ぼんやりしてきます。体の様子と合わせて観察し、気になる場合はかかりつけ医に相談しましょう。なお寝ている際の呼吸については、「観察ポイント17:睡眠」に記載しました。子供や赤ちゃんのいびきについて気になる方はそちらをご覧ください。
・息が荒い(苦しそうに息をする)
・せきをする
・喘鳴(ぜんめい:ガラガラ、ゼイゼイという音)がある
・声がかれている
観察ポイント7:食事
病気のサインを見つけるために、子どもの食事の様子を観察することも重要です。病気のときは、食欲が減退することが多いものです。しかし、子どもの食欲の増減にはむらがあります。
一般的に、乳児の場合は、ミルクを飲んだり飲まなかったりしても体重が増えている場合は、病気の心配はありません。また、ミルクを飲まなくても機嫌がよい場合も、病気の心配はありません。
幼児の場合も、食事をとらなくても、体重の変化がない場合や元気な場合は、病気の心配はありません。一方、食事をとらず、体重が減っている場合や元気がない場合は、病気の可能性があり注意が必要です。
また、摂食障害の1つに、小学校低学年ぐらいから中学生にかけて、几帳面で真面目な女児に多く見られる神経性食思不振症(拒食症)があります。本人に自覚がない(病識が乏しい)場合がほとんどですので、医療機関の受診が必要です。
観察ポイント8:喉
子供は、ウイルス感染ために扁桃腺が腫れることも多いでしょう。腫れると、喉の奥の色と形が変化し、痛みが出ます。
・赤くなっている
・痛がる
観察ポイント9:皮膚
皮膚は体の表に出ているので見やすいポイントです。子供のうちは、皮膚にはいろいろな反応が頻繁に出ます。子供特有の、皮膚に出る感染症もたくさんありますので、気が付いたら早めに医療機関に相談しましょう。
・赤くなっている
・腫れている
・乾燥している
・発湿が出ている
・水疱・かのう
・化膿がある
・傷がある
・出血がある
・あざになっている
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観察ポイント10:腹
お腹の様子については、お腹そのものの触感や、痛がる子供の態度の観察もありますが、排泄の観察が有用です。というわけで、次のポイント11にも詳しくありますので、合わせてご参照ください。
・張っている
・痛がる
観察ポイント11:排泄
病気のサインを見つけるためにも、普段から子どもの排泄の様子を観察することは重要です。便の色が重篤な病気の発見に繋がるケースもあります。観察ポイントは以下の通りです。
・尿・便の回数がいつもと違う
・尿・便の量がいつもと違う
・尿・便の色がいつもと違う
・尿・便のにおいがいつもと違う
・下痢をする
・便秘になる
(1)尿の観察
尿の回数・量を確認します。人間のからだを構成する水分量は、大人の場合、男性は60%、女性は50%です。子どもの場合、新生児は80%、乳幼児は70%と、大人より多くなっています。このため、特に、乳幼児は、脱水状態になりやすくなっています。発熱などで水分の蒸発量が多いときばかりでなく、水分の摂取量が足りないときは、病気ではなくても尿が少なくなったり(乏尿)、尿が出なくなったり(無尿)しますので、注意が必要です。
平均的な子どもの1日の尿の回数・量は以下のとおりです。
新生児 | 乳児 | 幼児 | 学童 | |
回数(回/日) | 6〜13 | 14〜20 | 7〜12 | 7〜8 |
量 (ml/日) | 30〜300 | 350〜550 | 500〜1,000 | 800〜1,400 |
(2)便の観察
便の性状・色を確認します。
①便の性状
健康な子どもの便は、バナナ状、半練り状です。ドロ状、水状(水様性)の場合は、下痢が考えられます。
②便の色
通常の便の色は、緑、黄、茶です。
便の色が白のときは、乳児嘔吐下痢症、胆道閉鎖症などの可能性があります。
急性乳児下痢症は、生後6か月以上の乳児に見られることが多いです。乳幼児の場合、下痢時に水分が十分にとれていないと、半日から1日で脱水が強度となり意識不明となることもあります。医師の管理のもとに経過観察が必要になりますので、自然治癒を待たずに医療機関を受診しましょう。
また、胆道閉鎖症は、生後0~3か月までの新生児や乳児に見られます、自然には回復しません。胆道閉鎖症は、生後1か月までに手術をしないと治りが悪くなるため、早期発見・早期手術が重要です。胆道閉鎖症が疑われる場合は、すぐに医療機関を受診しましょう。
便の色が赤のときは、腸重積症などの緊急処置を必要とする病気の可能性もありますので、医療機関の受診が必要です。
観察ポイント13:体温
子どもの体調に変化が疑われたときには、まず、体温を確認しましょう。また、体温の異常を知るためには、前提としてその子どもの平熱を知っておく必要があります。また、体温は、いつ、どこで、どのように測定したものなのかも重要になります。
(1)子どもの体温の正常値
子どもの体温の正常値は35.0~37.4℃です。しかし、子どもの体温は、子どもの成長段階や季節、1日の時間帯でも変化しています。体温の平均は、幼児より乳児のほうが、乳児より新生児のほうが高いものです。体温は、1日のうちでは午後が一番高くなります。体温は、気温によって変化しやすく、夏では高く冬では低くなりやすいです。
(2)測定部位と体温差
体温は、測定する部位によっても変化します。子どもの場合は、腋窩(わきの下)や鼓膜で測定することが多いですが、入院したときなどは、直腸で測定することもあります。そのほか、口腔内(口の中)で測定していたこともありますが、口腔内損傷の危険があるため、最近は行われていません。腋窩での測定温度(腋窩温)は、他の場所より低くなり、深部体温である鼓膜温や直腸温は、腋窩温や口腔温より高くなります。
(3)体温計の種類
子どもの体温測定に使用される体温計には、腋窩温を測定する電子体温計と、鼓膜温を測定する耳式体温計があります。子どもの耳は、大人よりも鼓膜への通り道(外耳道)が曲がり方が大きいです。このため、耳式体温計で正確な体温を測定することは、腋窩で測定するよりも難しいです。
また、子どもは、耳あかが多いため測定値が安定しないことや、中耳炎のときは測定できないなどの問題もあります。
それぞれの体温計の使い方は、次のとおりです。
電子体温計
①腋の下のくぼみの中央に、体温計の先端を当てる。
② 上半身に対し、体温計が30°くらいの角度になるようにして腋をしっかり閉じる。
③ 体温計をはさんだまま、子どものからだを動かさないようにする。
④ 予測式体温計(測定後10~30秒間の体温変化である温度上昇曲線から、10分後の体温を計算予測する機器)の場合は、体温計の電子音が鳴る(10〜30秒後)まで待つ。水銀体温計や実測式体温計の場合は、5~10 分待つ。
耳式体温計
a.子ども(新生児)が寝ている場合
①子どもの耳が上になるように顔を横に向ける。
②子どもの耳に体温計を入れる。
③片手で子どもの頭を押さえ、動かないようにする。
b.子どもが動き回る場合
①体温計を入れる子どもの耳の反対側に片手を添える。
②子どもの頭を押さえ、動かないようにする。
③耳の奥を確認してから、体温計を深く入れる。
観察ポイント14:機嫌
病気のサインを見つけるために、子どもの機嫌を観察することも重要です。大人がからだの調子が悪いときは、だるさを感じるように、子どもも病気のときは、何となく元気がなかったり、すぐにぐずったりするものです。遊んでいるときに元気があるか、ぐずっていないか、寝てばかりいないかなど、子どもの様子を注意深く観察することで体調の変化のサインを見つけることができます。
子どもの機嫌は、病気だけでなく、自律神経のバランスが崩れていることでも変化することがあります。人間の神経は、自分の意思でコントロールすることができる体性神経と、自分の意思ではコントロールできない自律神経の2つに分けられます。自律神経は、さらに、交感神経と副交感神経の2つに分けられます。
(1)交感神経との関係
交感神経は、激しい緊張、強い不安、非常に嫌な体験などがあったときに反応する神経です。保育園に登園する日の朝「お腹が痛い」と言っていた子どもが、保育園を休むと痛みが消え、元気に遊んでいるということがあります。これは、登園の緊張により、交感神経が刺激されたことによるものと考えられます。そのほか、病気がなくても、交感神経の反応により、頭が痛い、足が痛い、食欲がない、胸がつまる、便通が悪いなどを訴えることがあります。
(2)副交感神経との関係
交感神経とは反対に、副交感神経は、心が緩んだとき、気分がよいときに反応する神経です。
緊張している子どもをしっかり抱きしめてあげると、副交感神経が刺激され、子どもの不安は解消されます。
このように、子どもの機嫌は、自律神経が関連して悪くなったりよくなったりすることもあります。子どもの様子を注意深く観察することが重要です。
観察ポイント15:泣き方
乳幼児、特に、乳児はよく泣きます。お腹がすいたとき、おむつが濡れているとき、そのほかさまざまなときに、自分の気持ちを表そうと泣きます。したがって、「子どもが泣いている=病気のサイン」とは言い切れません。泣き方にも、正常の場合と異常の場合があるのです。病気のサインを見つけるために、子どもの泣き方を観察することも重要です。
(1)病気の心配のない泣き方
病気の心配のない泣き方の例は、次のとおりです。
・泣き声が大きいが、すぐに泣きやむ
・抱くと泣きやむ
・おむつを替えると泣きやむ
・母乳や人工乳(ミルク)を飲むと泣きやむ
(2)病気の可能性のある泣き方
病気の可能性のある泣き方の例は、次のとおりです。
・泣き声が激しい
・絶え間なしに泣く
・足を腹のほうに縮めて泣く
・急に不機嫌になって泣き出す
・泣きながら顔色が悪くなって、ぐったりとする
・ 泣きやんでも、しばらくするとまた激しく泣き始める(この状態を繰り返す)
泣いている原因が重大な病気であった場合、緊急で検査を行い、結果によっては手術が必要となることもありますので、すぐに医療機関を受診しましょう。
観察ポイント16:顔色
病気のサインを見つけるために、子どもの機嫌とともに、子どもの顔色を観察することも重要です。顔色にも、正常なものと異常なものとがあるのです。
(1)病気の心配のない顔色
病気の心配のない顔色の例は、次のとおりです。
①赤色
・泣いているときに真っ赤になる
・排便するときに赤くなる
②黄色
・新生児生理的性黄疸により黄色になる。
・手のひらだけが黄色になる
(2)病気の可能性のある顔色
病気の可能性のある顔色の例は、次のとおりです。
①赤色
前述とおり、泣いているときや排便のときに赤くなる場合は病気の心配はありません。ただし、ずっと赤いときは、発熱や発疹などの可能性があります。
②黄色
顔などの皮膚が黄色になる状態は、黄疸と呼ばれます。多くは新生児期、乳児期早期に起こります。前述のとおり、新生児生理的黄疸などのときは病気の心配はありません。
原因となる疾患がなければ、1か月、長くても2か月で色は消えます。しかし、黄疸が長く続くときは病気の可能性があり、医師の判断が必要になりますので、医療機関を受診しましょう。
なお、乳児期以降に白眼に黄疸が見られる場合には、肝臓疾患の可能性もあります。
③紫色
顔色が紫色のときは、体内の酸素が不足している可能性があります。紫色になる状態は、チアノーゼと呼ばれ、唇や爪などに見られることが多いです。顔面全体が急に紫色になった場合には、呼吸器か心臓に重大な問題が起きていることが考えられます。黒みがかった紫色(暗紫色)
になっている場合には、呼吸をしているか、意識があるか、気道内に異物はないかなどを確認し、何をしているときに起こったかを調べ、すぐに医療機関を受診しましょう。
④白色
顔などの皮膚が白色になる状態は、蒼白そうはくと呼ばれます。蒼白になるというと、貧血を思い浮かべると思いますが、原因にはさまざまなものがあります。たとえば、低血糖やてんかん発作、泣き入りひきつけでも起こります。急に蒼白になる状態を繰り返す場合は、医師の判断が必要になりますので、医療機関を受診しましょう。
観察ポイント17:睡眠
病気のサインを見つけるために、子どもの睡眠の様子を観察することも重要です。夜の睡眠だけでなく、昼寝の様子も観察します。
・泣いて目が覚める
・目覚めが悪い(機嫌が悪い)
など、観察します。
おねしょ(夜尿症)は、多くの場合、病気の心配はありません。一方、子どもは、通常、いびきはかきませんので、いびきをかいている場合は注意が必要です。
①夜尿症
子どもの夜尿症は、成長とともに軽快するものです。子どもに対しても、もらしたことを怒ったり、トイレに行くよう無理強いしたりせず、必ず治るということを伝えて安心させます。
②いびき
・睡眠中にいびきをかいている場合…鼻の疾患(鼻炎、蓄膿症など)や口腔内の疾患「扁桃腺
へんとうせん」「口喉蓋(こういんがい)」「アデノイドの肥大や炎症など」の場合もありますので、一度、医療機関を受診しましょう。
・睡眠中のいびきが突然止まる場合…睡眠時無呼吸症候群の場合もあります。
◆まとめ・・・一度意識化されると、差異に気が付きやすくなる
かなりの情報量になりましたが、見るポイントを細かいところまで上げました。このように一度、言葉として意識化されると、見るべきポイントがわかるため、差異に気が付きやすくなります。一度にすべてを見るのは至難ですが、1項目でもいいので活用していく感じで見てあげてくださいね。
子供のことは1日ですべてを完璧に見られるようになる、というものではありません。むしろそのような切羽詰まった気持ちですと、むしろ育児ノイローゼ気味になってしまいます。子供が少しずつ育つように少しずつお父さんになっていくという気持ちで、気長に根気よく、普段からお子さんを見てあげてくださいね。
参考文献: 子どもの保健検定2級・3級公式テキスト(日本医学検定協会 )