お医者さんと一緒に考える糖尿病・原因と症状、予防と治療

糖尿病はどういう病気なんでしょうか?
病名はよく耳にしますが、自分や身近な人がかかってはじめて、どういう病気なのか?を調べることも多いと思います。
そんな糖尿病を初めて知る人のための、おさえておきたい原因、症状、予防、治療についての4つの基本情報について、お医者さんに伺ってまとめました。
(協力:日本医学検定協会)
ナオル先生。今日は糖尿病について教えてください。
Contents
糖尿病の原因
はい、からだにとって大切なエネルギー源である糖質(ブドウ糖)、そのブドウ糖の調節異常が糖尿病といえます。糖尿病はインスリン量の不足またはインスリン作用の低下により、慢性の高血糖状態となって引き起こされる疾患です。 インスリンというのは、「血中のブドウ糖濃度を調節する唯一のホルモン」のことです。 糖尿病には、Ⅰ型糖尿病とⅡ型糖尿病の2つがあります。
分類 | Ⅰ型糖尿病 | Ⅱ型糖尿病 |
糖尿病に占める割合
|
3~4% | 96 ~ 97%
|
発症年齢 | 小児から青年に多い | 成人から中高年に多い |
体格
|
やせた人が多い
|
肥満または肥満型であった人が多い |
発症の原因 | 免疫系の異常で自らの細胞を攻撃する自己免疫により、膵β細胞※が破壊・消失される | インスリンの分泌低下とインスリン抵抗性がさまざまに関与する |
遺伝因子 | HLA(ヒト白血球型抗原)に特徴がある(その他の遺伝子の関与も推定される) | 複数の遺伝子の関与が推定される |
家族歴 | ある人は2型より少ない | ある人が多い |
自己抗体 | 発症初期の約70%の例で、ICA(膵島細胞抗体)、IAA(インスリン自己抗体)、GAD(グルタミン酸脱炭酸酵素)抗体などの陽性率が高い | 陰性 |
病態 | 多くが絶対的インスリン不足によるインスリン依存状態となる | 多くはインスリン非依存状態(進行するとインスリン依存状態となる) |
ええと、糖尿病とは、ブドウ糖の調節異常。いつも血糖が高い状態のこと。 糖尿病には型は二つあって、先天的か、後天的にかかるのか、でタイプが分かれると考えていいでしょうか? どの年代層でもかかるんですね。
そうですね。Ⅱ型糖尿病は、インスリン分泌やインスリン感受性※に かかわる遺伝子の異常(遺伝因子)に、肥満、過食、運動不足、ストレスなどの環境因子が加わって発症すると考えられています。 Ⅱ型糖尿病の発症予防には、環境因子が加わることを防ぐこと、つまり、生活習慣を改善することが役立ちます。 ※インスリン感受性:分泌されたインスリンが、各臓器で機能を発揮できる状態であることをいいます。
肥満、過食、運動不足、ストレス。こういった日々の生活での事柄が原因、と考えられているものを、生活習慣病って呼ぶんですよね。
生活習慣病には、糖尿病、肥満症、高血圧、高脂血症、脳血管疾患、心臓病などがあります。特に、糖尿病、肥満症、高血圧、高脂血症の4疾患は、脳梗塞や心筋梗塞の発症に非常に強い関連があり、「死の四重奏」と呼ばれています。
死の四重奏…。いやですー。怖すぎる呼び方です。
糖尿病の症状
糖尿病になると、どうなっちゃうんですか?
糖尿病のおもな症状には、高血糖、口渇、多飲、多尿、体重減少、昏睡などがあります。しかし、発症初期のころには、症状が出ないこともあり、注意が必要です。 糖尿病が進行し、合併症を併発しているときは、人によってさまざまですが、網膜症による目のかすみ、視力障害、腎症による浮腫、神経障害による四肢のしびれ、冷感、感覚低下、ふらつき、眼瞼下垂などの症状が出ることもあります。気になる症状があるときは、全身の精密検査が必要になります。
最初は症状が出ないのに、ほおっておくと、他の病気と合わさって、いろいろな病状に発展していく、ということですね。怖いですー。
ナオル先生、その合併症って、なんでしょうか?
糖尿病の合併症とは?
糖尿病により、全身の大血管障害による疾患や細小血管障害による疾患が出てくるために、他の疾患を併発する、これが合併症です。症状と合併症についてまとめましたのでご覧ください。※図1 大血管障害では、虚血性心疾患(狭心症・心筋梗塞)、脳血管障害、閉塞性動脈硬化症などを併発します。 また、細少血管障害では、糖尿病性網膜症、糖尿病性腎症、糖尿病性神経障害などを併発します。 細少血管障害による糖尿病性網膜症、糖尿病性腎症、糖尿病性神経障害は、「糖尿病の3大合併症」といわれています。
糖尿病になると、血管に影響が出てくるから、合併して起こる病気は、全身に及ぶ。これは大変です。
場所 | 症状・合併症眼 |
眼 | 網膜症、網膜症 |
脳 | 脳梗塞、脳血管障害 |
肺 | 肺炎、肺結核、 |
心臓 | 心筋症、心筋梗塞、高血圧症 |
腎臓 | 腎障害 |
肝臓 | 脂肪肝、胆石症 |
大腸 | 便秘、下痢、閉塞性動脈硬化症 |
足 | しびれ、知覚異常、壊疽(えそ)、神経障害、潰瘍 |
図1
では、今挙げた疾患の中から、細少血管障害について、見ていきます。 まずは、糖尿病性網膜症です。糖尿病性網膜症は、眼の網膜にある細小血管が障害されて、新生血管※が発生するものです。新生血管は非常に脆いため、出血しやすく、それによりいろいろな症状を引き起こします。 初期のころは症状はありませんが、進行すると視力低下や視野障害が現れ、最終的には失明してしまいます。緑内障、網膜色素変性症とともに、失明の3大原因となっています。 ※傷が治癒した時や様々な病態で作られる血管。通常の状況では作られることはない。
目が見えなくなったら困ります・・・。
続いて、糖尿病性腎症。これは腎臓の糸球体にある細小血管が障害されて、腎症が発生するものです。尿蛋白や高血圧、浮腫が認められます。 早期であれば、血糖コントロールと、薬物治療で進行を遅らせることができますが、進行すると人工透析の導入が必要になります。日本透析学会の集計では、1998年に慢性腎炎を抜いて以来、日本で新規に人工透析を導入する原因の第1位になっています。
人工透析は辛いです・・・。
続いての糖尿病性神経障害は、細小血管が障害されて、体内に十分な酸素と栄養が運ばれなくなるものです。自律神経障害※が現れます。 感覚神経障害であり、ぴりぴりとした痛みや、じんじんとしたしびれなどの症状を伴う人は、糖尿病の人の約15%もいるといわれています。 ※自律神経障害:排尿障害、無発汗、便秘などの障害があります。
しびれるのも、辛いです・・・。
糖尿病の検査
ナオル先生、糖尿病かどうかって、どうやったらわかるんですか?
病院で、検査を行なって調べます。 糖尿病の検査には、一般的な健康診断で用いられる血糖の検査をまず行います。そのほかに精密検査を行います。 血糖の検査には、(1)空腹時血糖の測定があります。そのほか、(2)HbA1c(ヘモグロビンA1c)の測定、(3)75g経口ブドウ糖負荷試験(OGTT)があります。 (1)空腹時血糖 血糖値の単位には、mg/dL(ミリグラムパーデシリットル)が使われます。検査結果の正常値は、60〜109mg/dLとされています。健康診断の結果は、図2のように判定されます。 血糖値は、ホルモンの働きだけでなく、さまざまな因子や原因で変動します。一般健康診断では、通常、2回以上測定して判断します。 (2)はHbA1c(ヘモグロビンA1c)の数値測定です。 (3)OGTTは、耐糖尿検査ともいわれ、体内にブドウ糖が入ってきたときの糖の処理能力(代謝能力)を検査するものです。 空腹時血糖を測定したあと、75gブドウ糖溶液を口から投与(経口投与)します。そして、30分後、60分後、120分後の血糖値を測定し、糖の代謝能力を調べます。測定されたOGTT値と空腹時血糖から、糖尿病が診断されます。 OGTTは、軽度の糖代謝異常を調べるためには最も感度の高い優れた検査方法であり、糖尿病の高リスク群を発見したり、糖尿病の病態を把握したりするのに有用です。
優 | 良 | 可 | 不可 | |
空腹時血糖
mg/dl |
80-110未満 | 110-130未満 | 130-160未満 | 160以上 |
図2
糖尿病の治療
では最後に、かかってしまったら、病院ではどうやって治療するんですか?
食事療法、運動療法、薬物療法を組み合わせて治療を行っていきます。その際、特に重要になるのが生活習慣の改善です。 食事療法の基本は、適切なカロリー摂取、規則的な食事、栄養バランスのとれた食事を心がけることです。食事療法により、肥満を改善できます。運動療法の基本は、酸素を十分に取り入れる事ことを目的とした全身運動、つまり有酸素運動です。運動療法により、肥満を改善できるほか、インスリンの効果を上げることができます。食事療法・運動療法ともに、糖尿病治療の基本になる重要な療法です。 食事療法・運動療法によっても改善が進まない場合、薬物療法が選択され、経口血糖降下薬が使用されます。経口血糖降下薬によっても改善が進まない場合は、インスリン療法(注射により、からだの外からインスリンを補 充する療法)が選択されます。
病院でも、生活習慣の改善をするんですね。食事と、運動っていうことは・・・、今から自宅でもできますねー!
まとめ・・・お医者さんに聞いた糖尿病の基礎知識とは? イエルのメモまとめ
いかがでしたか?ナオル先生に聞いた糖尿病で知っておきたい基本情報。イエルがまとめたメモで一緒におさらいしましょう!
✔︎ 糖尿病は、ブドウ糖の調節異常のこと。いつも血糖が高い状態のこと。
✔︎ 先天的にかかる人と、後天的にかかる人がいる。
✔︎ どの年代層でもかかる。
✔︎ 肥満、過食、運動不足、ストレス。こういった日々の生活での事柄が主な原因。
✔︎ 脳梗塞や心筋梗塞の発症に非常に強い関連があり、「死の四重奏」と呼ばれている。
✔︎ おもな症状は、高血糖、口渇、多飲、多尿、体重減少、昏睡など。しかし、発症初期は、症状が出ないこともある。進行すると、合併症を起こしていくことも。
✔︎ 糖尿病は血管に影響が出てくるから、合併して起こる病気は、全身に及ぶ。
✔︎ 糖尿病かどうかは、病院で空腹時血糖や、精密検査をして調べる。
✔︎ 食事療法・運動療法が基本の重要な治療法。
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