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【医師実践】家族がインフルエンザ感染した時にできる9つの対策

 2017/01/30 コラム 予防 子供 病名
この記事は約 9 分で読めます。

インフルエンザとは?

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インフルエンザは正確には「インフルエンザウイルス」というウイルス感染症の一つです。主にくしゃみや咳などで感染するのですが、感染した人やその人が使ったものを触ったりすることでも感染することが知られています。

学校のクラス内でインフルエンザが流行して学級閉鎖になってしまうように、感染した人に接触する機会が多いほどインフルエンザの感染は広がっていきます。

このように考えると、接触機会の多い家族が感染した場合はとても問題になりそうです。

インフルエンザが家庭内に感染し広まってしまうことは「家族内感染」と呼ばれます。字面から、なんだか怖い感じがしますが、「家族内感染」の対策も通常の病院などで行われている感染対策と同じことを行うことでリスクを低くすることができます。では次に、「家族内感染」の実態について詳しく見ていきます。

家族内での感染は3割増

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インフルエンザの家庭内感染率は、普通に日常生活を送っている時に感染する場合(市中感染)の2〜3倍といわれています。いくつかの文献では、家族内感染の発生率は7.8%~23.3%と報告されています。(1,2)

学校のクラスや会社にインフルエンザに感染した人がいても、ここまで高い感染率にはならないことを考えると、高い割合で「家族内感染」を起こしていることがわかりますね。

では、家族の中で最初に誰が感染源になったときに、「家族内感染」の発生が高いのでしょうか?

誰がインフルエンザを持ちこむのか?

infuruenza

2011~2012年シーズンから2015~2016年シーズンまでのインフルエンザAの感染統計結果がありますので紹介しましょう。(1)

  • インフルエンザが家族内感染した時に最初に感染した人の割合(高感染率順)
  • 乳幼児27.7%
  • 学童18.2%
  • 父親16.3%
  • 中高生14.6%
  • 母親10.2%
  • 両親以外の成人7.5%。

インフルエンザが「家族内感染」を起こす場合の感染源として一番多いのは、保育園・幼稚園・学校などで集団生活をする「乳幼児・学童」であることが分かります。集団生活をしているのでインフルエンザの感染者と接触する機会が多いことがその原因と考えられます。

面白いところでは「父親」が原因になることが、16.3%もあるということです。お父さんが外から家庭にインフルエンザを持ってきてしまうことも多いのですね。

家族内、誰が先にかかると感染しやすい?

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この統計では最初の感染者から、その後のだれに感染したか(感染経路)についても調べています。

  • インフルエンザ家族内感染の感染経路の割合
  • 乳幼児から母親へ感染 17.8%
  • 乳幼児から父親へ感染 6.2%
  • 母親から乳幼児へ感染10.9%
  • 父親から乳幼児へ感染14.9%
  • 母親から父親へ感染 1.9%
  • 父親から母親へ感染 8.6%

乳幼児から両親への感染率を見てみると、父親より母親への感染が約3倍多くありました。やはり、乳幼児の育児、看護のために接触が避けられない母親への乳幼児からの感染回避は困難であることがわかります。

興味深いことに、両親から乳幼児への感染率は、母親から乳幼児への感染率より、父親から乳幼児への感染率が多いことがわかります。

また、両親間の感染では、父親から母親への感染の方が、母親から父親への感染より約4倍も多く認めています。

これらの原因は、父親がインフルエンザに対する感染拡大を防ごうとする意識が低いことが考えられました。

お父さんのインフルエンザに対する認識の低さが、家族内感染を広めてしまう可能性があるのです。お父さん、注意してください。

家族全員のインフルエンザに対する予防の認識を高めることが「家族内感染」を防ぐには重要だということです。

感染してからいつまでが注意が必要なのか?

次に、もし、インフルエンザに家族が感染してしまった場合、何日間その感染拡大に注意しなければならないか?をみていきます。

インフルエンザウイルスに感染すると、どれくらいからウイルスを排出するようになるのかを調べた報告があります。これは、健常人ボランティアに、インフルエンザウイルスを感染させた後の、排泄期間や症状出現期間について調査したものです。(3)

【結果】

  • インフルエンザウイルス摂取後、インフルエンザウイルス排出は0.5~1日で始まる。
  • インフルエンザウイルス排出期間は4.8日間。
  • インフルエンザウイルス量のピークは2日目。
  • インフルエンザウイルスの潜伏期は1~4日(平均2日)。

インフルエンザの潜伏期間が平均2日で、インフルエンザウイルスの排出が、0.5~1日で始まることを考えると、症状が出た時にはすでにウイルスがまき散らされていることが想像されます。

最も気を付ける日は、症状が出てから何日目?

つまり、「家族内感染」を完全に防ぐことはできないのです。やはり、インフルエンザに感染しないことが一番重要なのですが、排泄されるウイルス量のピークが2日目なので、症状が出始めた時に一番、気を付ければ「家族内感染」を少しでも防止できるかもしれません。

実際に、「家族内感染」が最初に感染した人から、何日後に起こったか?という発症間隔を調べた報告もあります。(2)

それによると、発症の間隔は初めに感染した人から1~7日間であり、そのピークは第2日目でした。その割合は最初の4日間で89%を占めていました。このことは、先ほどのンフルエンザウイルスに感染すると、どれくらいからウイルスを排出するようになるのかを調べた報告の結果と共通していました。初めに感染した人の症状が出始めてから、2日目までが特に注意したほうが良いということです。

この報告では、その他、とても重要なことを伝えています。

それは、感染者への抗ウイルス治療により95%はほぼ2日で解熱し、ウイルス残存は解熱の1日目では80%、2日目では40%、3日目では10%と低くなったということです。

インフルエンザに対する早期治療によりウイルス量を減少させ、「家族内感染」の低下も期待できるということです。実際に、『インフルエンザの治療開始が早ければ、その家族の感染率は低くなる。』との報告もあります。(4)

インフルエンザワクチン接種は有効?

インフルエンザの予防策として一番にあげられるのがワクチンの予防接種ですが、「家族内感染」の予防として、インフルエンザワクチンは効果があるのでしょうか?

結論から言うと、ワクチンの予防接種は「家族内感染」予防に効果を認めています。

『インフルエンザワクチンを行っていない家庭では家族内感染が多かった。』との報告があり、家庭内感染におけるワクチンの有効性はインフルエンザA型でもインフルエンザB型でも認められています。

これにより、インフルエンザワクチンが、個人のインフルエンザの発症予防に加え、周囲への感染を防御する可能性が示唆されました。

インフルエンザのワクチンは「家族内感染」を予防する点でも非常に重要だということです。特に幼少児、学童、高齢者のいる家庭では積極的に摂取をしたいところですね。

抗インフルエンザ薬の予防投与ができる人は決まっている

インフルエンザワクチンとは別に、感染拡大を予防する目的で、身近な人がインフルエンザに感染した時に抗インフルエンザ薬を予防的に投与することができます。

しかし、残念ながら誰もができるわけではありません。

オセルタミビルリン酸塩(タミフルⓇ)を予防投与として用いる場合、原則としてインフルエンザウイルス感染症を発症している患者の同居家族、または共同生活者である次の者としています。

  1. 高齢者(65 歳以上)
  2. 慢性呼吸器疾患または慢性心疾患患者
  3. 代謝性疾患患者(糖尿病など)
  4. 腎機能障害患者  (5)

このように、通常の体力がある人への予防的投与は残念ながら勧められていません。つまり、家族内で、予防薬としてタミフルのような薬を予防投与ができるのは、高齢者や上記③~⑤の基礎疾患を持つ人だけに限られているということです。

家族内での感染対策まとめ

以上、たくさん挙げましたが、最後に「家族内感染」の感染予防・対策についてまとめます。

  1. ●インフルエンザワクチンの予防接種が重要
  2. ●各自が自らマスクや、うがい、手洗いなどで、インフルエンザに感染しない予防策をとることが重要
  3. ●感染者が出た場合、感染者に対し、症状発症時から2日間は注意が必要
  4. ●可能であれば、感染者と生活する部屋を分け、可能な限り看護は決められた人が行う
  5. ●感染者はマスクを着用し、看護する人も、接触時はサージカルマスク(医療用マスク)など着用する
  6. ●部屋の加湿と保温、換気に注意する
  7. ●感染者が鼻をかんだティッシュペーパーなどは、ビニール袋で密閉して廃棄する
  8. ●感染者はなるべく早く「抗ウイルス剤」の治療を始めることが重要
  9. ●高齢者や指定の病気がある家族は「抗ウイルス剤」で予防ができる

まだまだ、寒い日が続きます。インフルエンザの「家族内感染」は家族全員の予防意識の向上で防ぐことが可能ですので、気を付けていきましょう。では、また。

参考文献、論文

(1)プライマリケアのための インフルエンザ診療 2016-2017 医療ジャーナル社
(2)インフルエンザの家庭内感染について 内田 良行ら 京都医学会雑誌 2008年55巻1号 Page79-82
(3)Carrat F, et al: Time lines of infection and disease in human influenza : a review of volunteer challenge studies. Am J Epidemiol, 167 : 775-785, 2008
(4)Risk factors of household transmission of pandemic (H1N1) 2009 among patients treated with antivirals: a prospective study at a primary clinic in Japan. Hirotsu N  PLoS One. 2012;7(2):e31519.
(5)抗インフルエンザウイルス剤タミフル®カプセル75TAMIFLU®オセルタミビルリン酸塩カプセル添付文書,中外製薬株式会社

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ナオル

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こんにちは。日本を健康にすべく健康惑星からやってきたナオルです。


僕、こう見えて医者なんです。人間の体って面白い。特に、地球上生物の栄養摂取と排泄の仕組みは興味深い(僕たちは食べませんから)。そんなわけで、専門分野は消化器、肛門疾患です。今日も日本中から集めた論文や臨床に基づいた確かな情報をお届けします。


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