胃潰瘍・十二指腸潰瘍

胃潰瘍
【どんな病気?】
胃や十二指腸の壁がえぐれ、クレーター状になった状態、また粘膜の抵抗が衰え、粘膜を破り、胃の壁がえぐれた状態をいいます。えぐれた部位に血管があると、出血したり、壁を貫くと穴があいた状態となり、緊急事態となります。胃潰瘍/十二指腸潰瘍は、ストレス・薬剤(ステロイド剤、非ステロイド消炎鎮痛剤等)などにより胃酸の分泌と胃粘膜の保護の関係が崩れたときに発生します。その他、ヘリコバクター・ピロリ菌感染による慢性胃炎も胃潰瘍の発生と関連があります。
さらに詳しく→ よくわかるピロリ菌
損傷の進行度により以下のように分類されています。
Ul-1: 潰瘍の初期で粘膜層に組織欠損がとどまるもの。「びらん」ともいう。
Ul-2: 組織欠損が粘膜筋板を越えて、粘膜下層に達するもの。
Ul-3: 組織欠損が固有筋層に達するもの。
Ul-4: 組織欠損が固有筋層を貫き固有筋層が断裂しているもの。
十二指腸潰瘍は若者に多いですが、胃潰瘍は中高年に多い傾向があります。
【体の症状は?】
人によって症状は様々ですが、胃潰瘍は食後、食べ物が潰瘍を刺激するために食後に痛みます。痛みは心窩部痛(みぞおちの痛み)から始まることが多いようです。十二指腸潰瘍は胃酸が潰瘍を刺激するため空腹時(夜間時など)に痛みが出ます。ともに、胸焼けや吐き気を伴うこともあります。ただし高齢者などでは、痛みが出ないこともあり、症状が出るか否かは個人差があります。黒色のタール便や吐血は出血しているサインであり緊急に処置が必要です。深い潰瘍の場合、胃・十二指腸に穴があいてしまうことがあります(消化管穿孔)。強い腹痛が出現し、この場合も緊急に処置が必要になります。
【検査】
内視鏡検査を行います。潰瘍性病変は常にガンの可能性を疑い、病理組織検査のために、生検(組織の一部をとってくる)をします。ピロリ菌の存在チェックは、胃の出口付近より粘膜の一部を採取して調べます。潰瘍性病変は常にガンの可能性を疑い、病理組織検査のために、生検(組織の一部をとってくる)をします。
さらに詳しく→ 内視鏡検査って何をするの?
出血している場合には、内視鏡検査の前にまず全身状態の安定をはかる為に輸液、輸血後、胃をよく洗浄し、中にたまった血液を取り除きます。胃の洗浄は、鼻から細い管を胃の中に入れ、そこから胃に水を入れたり引いたりして行います。
【治療・処置】
潰瘍の治療は、潰瘍の状態によって異なります。
1:出血している場合や、出血しそうな潰瘍:緊急的に内視鏡で確実に止血をする
内視鏡下クリッピング止血法:露出している血管や出血部位にクリップを掛け血管を閉じてしまう方法。
内視鏡下ヒートプローブ止血法:ヒートプローブと呼ばれる先端が加熱できる器械を内視鏡で見ながら潰瘍の出血部位にあてて、そこを焼いてカサブタをつくってしまう方法。
内視鏡下エタノール局注療法:アルコールを注入し、出血している血管を固めてしまう方法。時に血管を収縮させる薬(アドレナリン)を注入することもあります。
2:消化管に穴が開いてしまった潰瘍:緊急に入院し厳重な管理が必要。場合によっては緊急手術
胃・十二指腸が潰瘍により穿孔(穴が開く)してしまった場合、腹腔内に胃内容物が出てしまうので、腹膜炎になります。限局した腹膜炎の場合は、入院・絶食にして点滴から抗潰瘍薬を投与して慎重に経過観察を行います。
腹膜が広範囲に広がった場合は、薬の投与などの保存的治療のみでは、全身状態が悪化してしまうので、緊急で穿孔部を閉鎖し腹腔内をきれいに洗浄する手術が必要になります。
3:出血の危険は少ない潰瘍:内服薬で治療開始
潰瘍から出血している場合、または潰瘍の底に血管が見えていて、出血の危険が高いと思われる場合には、内視鏡にて止血の治療を行います。
以上の方法で、大部分の出血は止めることができます。止血治療後は食事をしばらく中止(絶食)し、内服に加えて点滴薬の治療を行います。
内視鏡的に治療が困難な場合には、血管造影(腹腔動脈造影)にて出血の原因である動脈を内側から詰めてしまう治療を行います。それでも再出血してしまう場合には、やむなく外科的手術(胃の切除)が行われることになります。
出血の危険の少ない潰瘍の場合には、内服薬にて治療を開始します。治療に使用される薬剤は、プロトンポンプインヒビター(PPI)、H2ブロッカー(H2B)の2つが主流です。加えて粘膜保護剤などを使用することが一般的です。
胃潰瘍/十二指腸潰瘍は再発しやすい病気です。内服中止後1年以内の再発率は胃潰瘍で20%、十二指腸潰瘍で30%といわれています。
「内服をやめると再発が多い」「内服しているにもかかわらず潰瘍が治りにくい」などは、ピロリ菌の存在が強く疑われます。潰瘍の患者さんの約90%にピロリ菌が存在しているといわれています。この菌を除く治療(除菌療法)を行えば再発率は大幅に減少することが明らかになっています。
その他、潰瘍の治療には、日常生活で精神的・肉体的ストレスから解放するように努力することや、禁煙、禁酒、刺激物を避ける食事をとることなど生活習慣を改善することも重要になります。