食道静脈瘤

◆食道静脈瘤
【どんな病気?】
肝硬変をはじめとする肝臓の疾患の際、門脈(肝臓への血管)圧があがり、食道の内側の静脈が太く蛇行した状態をいいます。軽度のものは特に心配ありませんが、大きくなると食道粘膜の壁が破れて突然大出血することがあります。
全身に流れた血液は、肝臓に一度集まります。しかし、肝臓の病気がある場合、肝臓にたくさんの血流が戻れなくなります。戻れなくなった血液は、抜け道を求めて、肝臓のまわりの細い血管に流れていきます。食道の細い血管にも、肝臓に戻れなかった血液があふれて流れ込んできます。本来、細かった血管も、流れる血液の量が多くなると次第に太くなり、コブ状に膨れます。これを「静脈瘤」と呼びます。
【体の症状は?】
小さなうちは特に症状はありません。大きくなると食道粘膜の壁が破れて突然大出血することがあります。そのため肝臓の病気、特に肝硬変と診断されている方は、定期的な食道の検査が必要です。
【検査】
上部消化管内視鏡検査:食道内に粘膜を押し上げるように怒張した静脈が認められます。医師側が内視鏡で観察するときのポイントは、出血する可能性がある静脈瘤を見つけることです。食道静脈瘤を診断し出血の可能性を判断するには主に6ポイントがあげられます。
1占拠部位 2形態 3基本色調 4発赤所見 5出血所見 6粘膜所見
これらを総合的に評価し、破裂の危険を予測します。形態が、結節状静脈瘤で、拡張が強く表面が凹凸不整なもの、静脈瘤を覆う粘膜が赤色調に変化した所見があるものは、出血の危険が高いもので、予防的治療が必要になります。
さらに詳しく→ 内視鏡検査って何をするの?
【治療・処置】
治療には、1:急性出血例に対する緊急治療と、2:待機予防的に行なわれる治療があります。
1:緊急治療
何より急性出血による全身状態の安定を図ることが大事です。輸液にて循環血液量(全身をまわる血液量)の維持や、出血に応じて輸血なども行ないます。また出血部位を調べるために、緊急で内視鏡検査を行います。静脈瘤の破れている部位が見つかったら、そこを輪ゴムで縛ったり、硬化剤と呼ばれる血管を固める物質を投与して止血をします。
しかし出血量が多いために内視鏡で出血部位がわからない場合にはSBチューブとよばれる風船を食道に入れてふくらませ、食道を内側から圧迫して止血を試み、後日、残った静脈瘤をきちんと治療します。その後、予防的治療に入ります。
2:予防的治療
療静脈瘤が破れる前に治療を施します。
- 内視鏡的静脈瘤結紮術EVL:内視鏡から、輪ゴムを使って静脈瘤を縛ってつぶします。
- 内視鏡的硬化療法EIS:血管内をかためる物質を静脈瘤に注射します。
通常これらの治療を組み合わせて行うのが一般的です。治療を行った後も定期的に内視鏡検査を受けて、再発がないかをチェックします。また静脈瘤ができた原因(肝疾患)に対しても検査・治療が必要です。
予後について
食道静脈瘤は、肝硬変をはじめとする肝臓の疾患の状況が安定しないと予防的治療を行っても軽快せず、再発を繰り返します。肝臓の治療はなかなか難しいものですが、悪化しないようにコントロールし、定期的に内視鏡にて食道静脈瘤の観察を行うことが重要です。