【閲覧注意】目で見るソケイヘルニア(脱腸)
Contents
太ももの付け根が膨らんできたら、ソケイヘルニアを疑おう
ソケイヘルニアとは、お腹にある小腸などの臓器が、太ももの付け根の筋膜の間から皮膚の下に出てくる病気です。昔から俗に「脱腸」と呼ばれています。ソケイ部とは足の太ももの付け根の部分を指します。本来は、お腹の中にある臓器(主に小腸)が筋肉層の断裂により飛び出すことにより起こります。脱腸が起こる部分はソケイ部をはじめ、その周辺、男性は陰嚢、女性は陰部に及ぶことがあります。
成人の場合、ソケイヘルニアになる後天的な要因としては、「腹圧が頻繁にかかる」ことで起こります。加齢、便秘、咳やくしゃみをよくしている人、重いものを持つ仕事をしている、腹圧のかかるスポーツをしている、などが要因になります。
ソケイヘルニアは内容物が出たり入ったりしている間は軽い痛みや、つっぱりなどの鈍い痛みがおきます。しかし、飛び出して戻らなくなってしまうと大変です。そのような状態を”嵌頓(かんとん)”といいます。戻らなくなった内容物が壊死した状態です。
病因へ行く前に悩む人が多い
足の付け根がふくらんだり、腫れになんとなく気が付き始めても、場所が場所なだけに、かなり悩まれる方が多くいらっしゃいます。
治療は早い方がいい、とはいえ、行き渋る方の理由も大変よくわかるものです。
病院であっても見られるのが恥ずかしい場所ですし、症状が軽ければ痛みも軽く急がなくても大丈夫そうだし、病院で何をするのかどうされるのか不安、といった声を多数耳にします。
そこで、ソケイヘルニアは実際どうなっているのか、放置しても命に別条はないといわれるものの、放置すると患部がどう肥大していくのかという実例をご紹介します。
ソケイヘルニア、肥大化するとこうなります
では実際にソケイヘルニアの患部写真を掲載します。患部になりますので、生々しい写真が苦手な方、お食事中の方などはご遠慮ください。
【男性のソケイヘルニア】
ソケイ部の膨らみがもっとも多い症状でしょう。腹部に力が加わると顕著に現れるので寝ている状態では目立ちません。
【陰嚢におよぶ大きなヘルニア】
このような大きな(陰のうにまで及ぶ)ヘルニアの場合は”入院手術”が安全です。
【女性のソケイヘルニア】
女性のソケイヘルニアも男性と同様にソケイ部の膨隆や痛み、違和感が発見のきっかけとなります。特に大腿ヘルニアは女性に多く、嵌頓(かんとん:血が通わなくなり紫色に腫れる)する可能性が高く腸閉塞症状(腹痛、腹部の張り、嘔吐など)で発見されることも少なくありません。女性の場合、膨れるという症状より、痛みのほうが強く現れることもあります。当然気張ることが多くなる妊娠・分娩や便秘は発生の大きな原因になります。
治癒には手術しか方法がない
太ももの付け根の筋膜が断裂したために起こっているソケイヘルニアですが、基本的に薬を飲んでも一度断裂した筋層は安静にしてもくっつくことはありません。ですので、治療方法としては、嵌頓(かんとん:血が通わなくなり紫色に腫れる)になる前に手術により断裂された筋肉を修復してあげることが必要になります。
手術方法は(1)断裂している筋層を縫って塞ぐ、(2)人工補強材を用いて断裂している穴を塞ぐ、の大きく2通りあります。
なお小児においては、手術をしない方がいい場合もあるため個人の状況により治療方法は異なります。
脱腸帯ってどうなの?
脱腸帯とはゴムなどの素材から出来ているもので、腰にベルトを巻き脱腸(ソケイヘルニア)の脱出部を圧迫し、出てこないようにする装具です。この装具での完治は不可能ですが大きく脱出する方は抑えることによって多少脱出における不快感を軽減できることがあります。ただし局所の皮膚炎や局所筋組織の脆弱化をきたす場合もあり、注意が必要です。
現在では各メーカーで素材も工夫されており、手術するまでの間や、忙しくて手術できない方、その他の合併症からやむをえず手術に踏みきれない方などが使用されています。
専門医に相談する際の病院の選び方
ヘルニアは自然治癒することはありませんので、基本的には手術以外に治療方法はありません。放っておくと、はみ出しているもの(腹膜や腸の一部)の重さにより、どんどん大きくなることが多いようです。ただ、命に係わることは少ない病気ですから、わずかな出っ張りで特に痛みがない場合、注意しつつ経過を見ていくのが一般的です。ただし、経過を見ていても治ることはありません。日常生活に不便がなければ治療を急ぐ必要はありませんが、余裕のあるときに早めに治療することをおすすめします。
専門医は、検索すればお住いの地域の周辺に何件か出てくると思います。しかし、専門医、とひとくちに言われても、具体的にはどこに行ったらいいのか、基準がなくお悩みの方もいらっしゃるでしょう。
またやはり腕のいいお医者さん、安心できるお医者さんに処置してもらいたいという希望もあることと思います。
そこで、いいお医者さんにつながる病院選びのキーになるポイントをお伝えします。
それは、「手術件数」です。ヘルニアの手術は決して難しい手術ではありませんが、専門的に数多くの件数をこなす施設とそうでない施設での違いは歴然としています。手術数の違いは、手術時間、再発率、痛みなどに反映されます。
手術件数が多いということは、それだけ多くの経験を積んできているため、不測の事態が起こったときでも冷静に対処し、適切な処置ができるということになります。
【手術件数の調べ方】
実際に病院や医師の症例数や手術成績を知るにはどうすればよいのでしょう?現在ですと、ホームページで公開していたり、病院の入口に掲示してある場合もあるようです。(病院によります)
不明な場合は、直接医師に尋ねてみるのもよいでしょう。
その際に、嫌な顔をしたり怒り出すようなら、その医師にかかるのはやめたほうがよいかもしれません。正々堂々と症例数や手術成績を公表できるということが、信頼できる病院の証ではないでしょうか。
ご自身の大切な体のために、安心できる病院で受診してください。