過敏性腸症候群

どんな病気?
腸に形態的な異常が無いにもかかわらず、腸が正常に機能しない疾患です。慢性の下痢が食事と無関係に起きます。特に会社や学校に行く日の朝食後にお腹の調子が悪くなったり、トイレにすぐ行けない状態の時に下痢を起こします。該当者は普段から「胃腸が弱い」と感じます。
体の症状は?
下痢や軟便が1日に2~3回以上起こります。1回の排便量は少なく、便意が強く、便をしたい気持ちは強い(おなかがしぶる)のに十分排便がでなく、残便感や不快感が残ります。休日や体がリラックスしている時には、症状は現れないのが特徴です。腹痛、腹部不快感、吐き気、嘔吐、げっぷ、おなかがゴロゴロ鳴る、食欲不振などの症状を伴うことがあります。
腸の内容物を運搬するぜん動運動が低下し、またS状結腸(左下腹部)の異常な収縮運動が起きると症状が出ます。腹痛の部位や程度は人によって様々ですが、左下腹部にでることが多いです。「お腹の具合がずっとよくならない」「検査をしてもどこにも異常がないのに下痢や便秘などの症状が続いている」などの症状があります。
下痢型
慢性の下痢が1日何回も起ります。1回の排便量は少なく、便意が強いにも関わらず十分排便できないため、残便感があります。便に粘液が混ざることはありますが、血便はありません。また下痢による体重の減少は見られません。
便秘型
腹痛があって便意を催してトイレに行っても便が出にくく、出てもコロコロとした便しかでません。
交代型
数日間泥状便、水様便、粘液の混じった便などが続き、その後は、便秘やコロコロとした便、細い鉛筆状の便が出るなどの症状を繰り返します。ガスがたまる、吐き気、嘔吐のほか、疲労感、頭痛、発汗、動悸などの自律神経失調の症状、不安感や抑うつ感などの精神症状を伴うこともあります。
原因として、緊張や不安、ストレスなど現代社会における心身のバランスが崩れているために起きます。胃や腸にはきめ細かい神経が非常に多く分布しています。そして、胃腸と脳は自律神経によりつながっているため、脳が不安や精神的圧迫などのストレスを受けると、自律神経を介してストレスが胃や腸に伝達され胃腸の運動異常を引き起こし、腹痛や便通異常が発生します。
検査
まず、消化器系の検査(大腸内視鏡検査)を受け、器質的病変(腫瘍、潰瘍、炎症性腸疾患:潰瘍性大腸炎など)がないことを確認します。年齢が若くても起きる疾患を除外しなくてはいけません。
治療・処置
便通異常や腹痛などに生活環境や行動の変化などが影響あるかを分析します。リラックスした生活を目指すため、日常生活の見直しも必要です。軽い運動、スポーツや趣味を活かしたストレスの発散、十分な休息・睡眠をとることが大切です。
- 下痢・便秘の緩和: 下痢止め(下剤、整腸薬など)
- 消化管の運動機能を改善: 抗コリン剤、粘膜麻酔薬、腸管運動調整剤など。
- 抑うつ感が強い場合: 抗不安薬、抗うつ薬、自律神経調整剤など。
食事は、 アルコールやカフェイン、暴飲暴食、香辛料の強いもの、冷たいもの、不規則な食事は避けることが望ましいです。