腸閉塞

◆腸閉塞
【どんな病気?】
なんらかの原因により、腸管の通過が障害された状態です。イレウスとも呼ばれます。内容によって機械的イレウスと機能的イレウスに分類されます。
機械的イレウスは腸管の閉塞を来たしているイレウスで、その中でもさらに、血行不全になっていない単純性イレウスと、血行不全がみられる複雑性イレウスに分類されます。
- 単純性イレウス:腸管の閉塞を来たしている疾患として大腸がん、腸炎、術後や外傷による腸管の癒着が多くあげられます。
- 複雑性イレウス:腸管の閉塞を来たす腸閉塞のうち、その部位を養っている血管の血行不全があり、そのままではその領域の腸管が壊死してしまいます。原因に腸重積、ソケイヘルニアかんとん、腸軸捻転症、メッケル憩室などがあげられます。
機能的イレウスは腸管が運動麻痺になる麻痺性イレウスと、腸管が痙攣性に収縮する痙攣性イレウスに分類されます。
- 麻痺性イレウス:腸管に器質的な疾患はなく、腸管壁の神経、筋が影響を受けて腸管運動が麻痺した状態です。原因として化膿性腹膜炎や癌性腹膜炎、子宮外妊娠、外傷などによる腹腔内出血,胆嚢炎、膵炎などの炎症疾患があげられます。
- 痙攣性イレウス:腸管に器質的な疾患はなく、腸管の一部が痙攣を起こしたものです。ヒステリーや神経衰弱による神経性やモルヒネ、ニコチンなどの中毒性のものもあります。
【体の症状は?】
1.単純性イレウス:緩徐に始まる周期的な腹痛・嘔吐、排便や排ガスの停止、腹部膨満感がみられます。症状が進行すると脱水症状も出てきます。
2.複雑性イレウス:単純性イレウスに比べて全身状態が重篤です。急激な嘔吐と強い腹痛が持続的にあります。腸管の血行不全を緊急に改善しないと、ショック状態になり命の危険があります。
3.麻痺性イレウス・痙攣性イレウス:緩徐に始まる周期的な腹痛・嘔吐、排便や排ガスの停止、腹部膨満感がみられます。原因の疾患の痛みを伴うこともあります。
【検査】
腹部単純X線撮影検査(腹部レントゲン写真):閉塞した口側の腸管拡張像が認められます。腸管内腔に貯留した内容物と、腸管中に発生した異常ガスも認められます。特に立位での撮影では、腸管内のガスが三日月状の黒い形をして認められるニボー(鏡面像)と呼ばれる特徴的な所見が認められます。
腹部CT検査:閉塞部より口側の腸管が拡張した像が認められます。拡張した腸管をたどることで閉塞部位と原因を確認することができます。
血液検査:単純性イレウス、麻痺性イレウス、痙攣性イレウスでは、嘔吐や、腸管内容物により脱水が強くなると電解質異常をきたすことがあります。しかし、初期においては、検査上の特徴的な異常所見を示すことはあまりありません。一方、絞扼(こうやく:血管が締められているところ)性イレウスでは、初期のうちから炎症反応の増加や、酸塩基平衡の異常というような生命の危険を感じさせるデータを認めます。絞扼性イレウスの程度を診断するうえで、血液検査は非常に重要です。
【治療・処置】
保存的治療:腸閉塞の治療の原則は、腸管の安静と原因疾患の治療です。腸閉塞と診断された場合、絶食にして点滴にて失われた水分を補給します。同時に腸閉塞を起こした原因疾患の治療を行います。麻痺性イレウス・痙攣性イレウスの多くはこの処置にて軽快します。
癒着性で単純性イレウスになっている場合も禁食により約9割が保存的に改善しますが、改善しない場合はイレウス管という管を鼻の穴から狭くなっている腸管まで挿入し、減圧を図ります。それでもだめな場合や食事を開始するとまたぶり返す症例は、外科的に原因の癒着をはがす手術をします。また単純性イレウスの原因が大腸癌である場合は、イレウス管にて一度減圧した後に、外科手術にて大腸切除を行なったり、一時的に人工肛門を作成し、二期的に大腸癌の手術を施行する場合もあります。
緊急手術:複雑性イレウスの場合は絞扼の解除が優先され、緊急手術になります。腸管の壊死部は切除が必要です。