特発性肛門痛

どんな病気?
特発性肛門痛は、痔核や切れ痔などのはっきりした肛門の病気がないにもかかわらず、肛門の奥に痛みを感じる病気です。身体所見、大腸内視鏡、CT検査、MRI検査などを施行しても器質的な原因(形の上での原因)が認められません。
直腸肛門痛は、人口の約7%の人があると言われ、やや女性に多く認められます。
痛みの性質や持続時間によって、一過性直腸肛門痛と慢性直腸肛門痛に分けられます。
はっきりした原因は分かりませんが、不安やストレスなどの精神心理的要因に加えて、肛門括約筋(肛門の周囲にある輪状の筋肉)、肛門挙筋の痙攣(けいれん)が考えられています。
精神心理的要因とは無意識に働いている「便を失禁するのではないか」という恐怖心などです。
体の症状は?
一過性直腸肛門痛と慢性直腸肛門痛では、痛みの性質と持続時間が違います。一過性直腸肛門痛では、急に肛門の激痛が出現して、数秒から数分で消失します。一方、慢性直腸肛門痛では、肛門の痛みや重い感じが、数十分以上続きます。座ったときに痛みが強くなる特徴があります。
直腸、肛門が過敏になっていますので、ちょっと便意を催しただけで痛みを感じ、排便とともに痛みが消失することも多いようです。しかし、逆に排便後に痛みを感じることもあります。
検査
大腸内視鏡、CT検査、MRI検査などで器質的疾患を認めないことが重要です。
治療・処置
治療法は、患者さんへの病気の詳しい説明と患者さんの理解が一番重要です。
その他、薬剤を使う方法、マッサージなどの理学療法、局所の神経ブロック、精神・心理療法などがありますが、どれも根治的な治療法ではありません。肛門の括約筋を含め、入浴などで心身共に緊張を和らげることや、精神安定剤が有効など、ケースバイケーズでさまざまな治療の選択肢がありますので、専門医を受診し相談してください。