神経性嘔吐(しんけいせいおうと)

【どんな病気?】
神経性嘔吐症の定義については、明確なものはなく、疾患概念も確立していません。
一般的には原因となる明らかな病気がなく激しく嘔吐を起こすものを意味し、心因性嘔吐症などとも言われます。
発症するときの心理状態は不快感や拒否感などの情緒体験を十分に意識できずに飲み込んでしまい、後になってそれらの感情が消化できずに、「吐き出す」というかたちで表現されると考えられています。
【体の症状は?】
嘔気・嘔吐が主な症状です。
嘔気・嘔吐はかなり激しい場合が多く、一度始まると数分から数時間の間隔でくり返し、意識的に止めることはできません。
脱水、体重減少、うつ気分なども認めます。
【検査】
詳細に病歴を聞き、必要な検査を行い下記のような嘔吐を起こす病気を否定することが重要です。
嘔気・嘔吐する病気
1 消化器系疾患
食道炎,アカラシア,胃腸炎,胃・十二指腸潰瘍,胃癌による幽門狭窄,虫垂炎,イレウス,腹膜炎,肝炎,肝硬変,胆石症,胆管炎,膵炎,膵癌など
2代謝性および内分泌性疾患
腎不全,電解質異常,肝不全,アルコール中毒,糖尿病,甲状腺機能低下症,妊娠中毒症など
3前庭機能障害
メニエル病,動揺病
4眼疾患
緑内障
5脳疾患
脳出血・梗塞,くも膜下出血,脳腫瘍
6薬の副作用
ジギタリス,抗癌剤,モルヒネなど
7その他の身体疾患
心筋梗塞,心不全,腎尿路結石,卵管炎など
【治療・処置】
入院して絶食にし、点滴治療を始めます。嘔気止めの薬を点滴投与と坐薬で使用します。
嘔気・嘔吐は軽減しても飲食をきっかけにすぐ再燃することが多いので、無理に早く飲食をすすめません。
嘔気・嘔吐の症状が強いときは、精神的に不安や緊張が強かったり不眠となっている場合が多いのでその場合には、精神安定薬、睡眠薬、抗不安薬などを投与します。また、うつ気分を伴っていることが多いので叱咤激励することは避けます。
食事摂取がほぼ回復すれば、点滴は終了して内服薬を調整し退院させます。その後は、外来で社会生活上のさまざまなストレスに対して適切に対処できるよう支持的サポートを続けます。