頭部外傷(とうぶがいしょう)

【どんな病気?】
頭部外傷は、ごく軽微な外傷も含めると日本全体で推定年間30万人発生するといわれています。
2013年の人口動態統計によれば「不慮の死」は年間約4万人で死因の6位です。その「不慮の死」の中で外傷を起因とする交通事故、転倒、転落は合計13251人でした。外傷による死亡のうち頭部外傷によるものは60%以上を占めていて、外傷死における頭部外傷は大きな位置を占めています。頭部外傷は救命されてもさまざまな後遺症が残存することがあります。脳損傷により植物状態となったり、日常生活に支障をきたし、その支援のために多くの社会資源を必要とすることが大きな課題として挙がっています。頭部外傷では下記の診断が付けられます。
頭蓋骨骨折
ヒビ状の「線状骨折」と骨が柔らかい小児に多く発生する「陥没骨折」があります。頭蓋底の骨折では、髄液の漏れを生じ髄膜炎などの原因となります。
急性硬膜外血腫
頭蓋骨と硬膜との間に生じた血腫が硬膜外血腫です。頭部CTで凸レンズ型の血腫がみられます。
急性硬膜下血腫
硬膜とクモ膜のと間に形成されるのが硬膜下血腫です。頭部CTで三日月型の血腫がみられます。
慢性硬膜下血腫
軽微な外傷後、3週間から数カ月後に硬膜とクモ膜のと間に血腫が形成されます。
外傷性クモ膜下出血
クモ膜下腔への出血であり、一般に急性硬膜下血腫や脳挫傷を合併することが多い疾病です。
脳挫傷
脳実質が損傷し脳浮腫、脳腫脹を伴います。
【体の症状は?】
頭部外傷では、痛みの他に神経組織が損傷されると意識障害や麻痺などの障害を認めます。その他、血腫が周囲の脳組織を圧迫したり、脳浮腫が起こると頭蓋内圧が上昇し頭蓋内圧亢進症状を認めます。
頭蓋内圧亢進症状では、頭痛、悪心、嘔吐、血圧上昇、徐脈などを認めます。
また、圧排された大脳組織が嵌頓し脳幹を圧迫すると脳ヘルニアになります。脳ヘルニアでは、呼吸停止や心停止が起こり危険です。
【検査】
頭部単純X線撮影:
頭蓋骨骨折の診断に有用です。
頭部CT:
血腫などの頭蓋内病変の検索や頭蓋底骨折の診断に有用です。
【治療・処置】
受傷時に完全に損傷してしまった神経組織を回復させることは不可能です。
治療は、外傷時点より後に発生してくる血腫、脳浮腫、感染症などに対して行われます。特に、血腫や脳浮腫による頭蓋内圧亢進を抑えることが重要です。頭蓋内圧を低下させるため、頭部を高く保つことや、浸透圧利尿剤などを投与したりします。
これらの治療法によっても頭蓋内圧がコントロールされない場合、もしくはされないと予想される場合に外科的療法が考慮されます。
血腫を除去する開頭血腫除去術、穿頭血腫除去術、頭蓋骨を一部除去することによって減圧を図る外減圧術、脳実質を除去することで減圧を図る内減圧術などがあります。