腸チフス(ちょうちふす)

【どんな病気?】
腸チフスとは、サルモネラによって起こる感染症のうちチフス菌に感染したものです。パラチフスA菌によるものはパラチフスと呼ばれます。
日本でも、衛生環境が良くなかった昭和20年代には数万人の届出がありましたが昭和40年以降は1,000人程度の発症になりました。衛生環境の良くなった現在では、海外旅行でかかってくる人が多く、アジア地域から毎年数十人程度の輸入症例を認めています。
感染症法では、国内でも監視が必要な3類感染症に指定されています。
【体の症状は?】
腸チフスとパラチフスの臨床症状はほとんど同じですが、一般的にパラチフスは腸チフスに比較して症状は軽くなっています。経口感染後、10〜14日の潜伏期を経て発熱を認めます。
第1病期に段階的な体温上昇と徐脈、脾腫、発疹の出現があり、自血球数は減少します。第2病期(極期)には40℃以上の熱、下痢または便秘を呈し、第3病期で弛張熱(日内変動が1℃以上あるが、一番低い時でも平熱にはならない)や腸出血を認め、第4病期で回復します。
腸チフスは他の腸管感染症と違い敗血症になりやすく、また感染後期の腸出血では腸穿孔が起こる可能性があるので、厳重な管理が必要です。
【検査】
培養検査:菌検出のため、血液、便、胆汁、尿の培養で菌検出が行われます。
【治療・処置】
治療は食事と安静と抗菌薬で行います。抗菌薬は、腸チフスに効果のある抗菌薬(クロラムフェニコール)を使用します。服薬期間は2週間が原則です。
東南アジア地域では近年クロラムフェニコールに対する耐性菌が出現しています。その場合には、その他の抗菌薬(ニューキノロン薬(オフロキサシンなど))が投与されます。
きちんと治療をしても菌が残ることがあるので、治療が終わってから確認の検査を行います。きちんと除菌をしておかないと、生涯にわたって保菌者になる可能性があります。