偽膜性腸炎(ぎまくせいちょうえん)

【どんな病気?】
抗生剤投与により腸内菌のバランスが崩れ、毒素を出す細菌(Clostridium difficile(CD))が異常に繁殖して起こす腸炎です。高齢者、年少者に多くみられます。抗生物質投与中や投与後に発熱、腹痛、頻回の水様下痢などの症状が出現します。病理組織学的には腸管粘膜の偽膜形成を特徴とする大腸炎です。最近は抗生物質の使用頻度の増加していすので、偽膜性大腸炎の発生率も増加しています。一般的には予後は良好ですが、約3%に劇症化する症例を認め。劇症化すると死亡率は34~58%と極めて予後不良であると報告されています。
【体の症状は?】
抗生剤を投与して2~7日ほどで突然、粘っこい血液を含んだ下痢や水溶性下痢を伴う腹痛を発症します。
【検査】
抗生剤の服用からの腹痛と下血があった場合は偽膜性腸炎を疑い大腸専門施設での検査が望まれます。大腸内視鏡検査により、黄色から白色の炎症性膜様物が点状に粘膜を覆うもの(偽膜)が確認されます。時に、浮腫、びらん、潰瘍が見られます。また、CDの存在診断として便培養法、便中毒素検出法などがあります。
【治療・処置】
原因抗生剤の中止をし、薬物治療と輸液管理を行ないます。薬物療法としてはバンコマイシンおよびメトロニダゾールが有効とされています。日本ではメトロニダゾール投与は国内未承認であるため、バンコマイシン経口投与が第一選択となります。厚生労働省偽膜性腸炎対応マニュアルでは、麻痺性イレウスのように腸管輸送能が低下し投与薬剤が小腸に停滞し吸収され、病変部である大腸まで到達しない場合にはバンコマイシンの注腸投与が推奨されています。